最大値原理とは? わかりやすく解説

最大値原理

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/10/05 05:24 UTC 版)

ナビゲーションに移動 検索に移動

数学における最大値原理(さいだいちげんり、: maximum principle)とは、特定の楕円型および放物型の偏微分方程式の解が持つある性質のことを言う。大雑把に言うと、ある領域内でのある関数の最大値は、その領域の境界上に存在する、ということがこの原理では述べられている。特に、ある関数が領域の内部で最大値を取るのなら、その関数は一様に定数である、ということについて述べた原理は「強最大値原理」と呼ばれる。関数の最大値は領域の境界上で取られるが、領域の内部でも同様に起こり得る、ということについて述べた原理は「弱最大値原理」と呼ばれる。他に、ある関数をその最大に関して単純に境界で制限するような、さらに弱い最大値原理も存在する。

凸最適化における最大値原理では、コンパクト凸集合上の凸関数の最大はその境界上で達成される、ということについて述べられている[1]

古典的な例

調和関数は、強最大値原理の適用される古典的な例である。正式に言えば、f が調和関数であるなら、その定義域の内部で f極大値を取ることはない。すなわち、f定数関数であるか、あるいはその定義域の内部の任意の点 に対して、その点での f の値よりもより大きい値を f が取るような、その点に任意に近い点が存在する[2]

f を、ユークリッド空間 Rn 内のある連結部分集合 D 上で定義される調和関数とする。 が、そのある近傍に含まれるすべての x に対して

が成り立つような D 内の点であるなら、関数 fD 上で定数である。

「最大値」を「最小値」に、「より大きい」を「より小さい」に置き換えることで、調和関数に対する「最小値原理」(minimum principle)を同様に得ることが出来る。

より一般的な劣調和関数に対しても、最大値原理は成り立つ。一方、優調和関数は、最小値原理を満たす[3]

証明の概要

調和関数に対する「弱最大値原理」は、単純な計算による事実の帰結である。証明において重要となるのは、調和関数の定義から、fラプラシアンがゼロであるという事実である。f(x) の非退化な臨界点であるなら、鞍点が存在する。実際、もしそうでないなら、f の二階微分の和がゼロとなることがなくなるからである。これはもちろん、証明としては完全ではなく、 が退化点である場合も残されているが、本質的な証明のアイデアである。

「強最大値原理」はホップの補題英語版に依るものであり、これはまたさらに複雑である。

関連項目

脚注

  1. ^ Rockafellar (1970) の32章を参照。
  2. ^ Berenstein and Gay を参照。
  3. ^ Evans を参照。

参考文献


最大値原理

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/06/18 02:16 UTC 版)

調和関数」の記事における「最大値原理」の解説

詳細は「最大値原理」を参照 調和関数平均値の性質は、最大値最小値)に強い制約課すため、調和関数領域境界最大値最小値)をとる。正確には、U を Rn有界開集合とし、φ が U 上の調和関数で、φ を境界連続拡張できるならば、 max U ¯ ϕ = max ∂ U ϕ {\displaystyle \max _{\overline {U}}\phi =\max _{\partial U}\phi } が成り立つ。この性質調和関数の最大値原理と呼ぶ。U が連結開集合である場合に、 max U ϕ {\displaystyle \max _{U}\phi } が存在すれば、φは定数関数となる。この性質調和関数の強最大値原理と呼ぶ。 最大値原理の直接的な応用としては、ポアソン方程式境界値問題における解の一意性の証明がある。Rn有界開集合U とその境界 ∂U において、f ∈ C(U)とg ∈ C(∂U)を与えポアソン方程式境界値問題考える。この境界値問題二つの解に対し、差を取ったものは調和関数であり、最大値原理より、その最大値最小値ゼロとなる。すなわち、二つの解は一致する

※この「最大値原理」の解説は、「調和関数」の解説の一部です。
「最大値原理」を含む「調和関数」の記事については、「調和関数」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「最大値原理」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「最大値原理」の関連用語

最大値原理のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



最大値原理のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの最大値原理 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの調和関数 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS