匹見ワサビと気候
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/21 14:02 UTC 版)
北海道を除く日本付近は亜熱帯高圧帯に属し、本来は砂漠になってもおかしくない緯度にありながら、豊富な降雨に恵まれた世界的にも珍しい地帯である。その降雨は冬となれば雪となり、なかでも本州日本海側は、世界で最も低緯度にある豪雪地帯とされる。匹見はその豪雪地帯でも、最も低緯度(最西端)に位置する。積雪は、越冬するワサビを霜の脅威から守ることができる。また、天然のダムとして機能し、ワサビを育む水を豊富に蓄える。さらに、匹見は島根県西部に位置しており、年間を通じて日照時間が短く、湿度が高い。日本固有種であるワサビは、もともと日本海側を中心とした分布をもつ植物であり、高温と強い日照を嫌い、多湿を好む。こういったワサビにとっての好条件が全て揃っていたため、日本人がワサビ栽培を始める遥か以前から、匹見にはワサビが豊富に自生し、身近なものとして存在し、親しまれてきた。 気候的に、匹見は現時点においてもワサビ栽培の適地であることには間違いないが、その将来は楽観できない。というのも、世界の平均気温は100年あたり約0.68度、日本は約1.15度の割合で上昇していると云われ、島根県浜田市は約1.1度上昇しているからである。気温の上昇率が0.55℃/100mとされるので、これは同一品種における気温ベースの栽培適地が単純計算で100年間に200m高地へ移動したことになる[出典無効]。かつて匹見では、標高の低い庭先でも一級品が収穫できたが、戦後から徐々に水温が上がり、暖冬続きでワサビの病虫害が蔓延しはじめてきた。農家によってはその病虫害を避け、栽培適地を求めて高地に圃場を移動する等の工夫をしているが、この様な地球温暖化適応策は、いつかは限界が来る。さらに日本海側では、これまで無い大きな規模の集中豪雨も頻発する様になった。ひとたび集中豪雨が来れば、ワサビが流され収穫できなくなることはもちろん、ワサビ田そのものに対しても壊滅的な被害を与えるからである。
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