北極振動の発生とその影響
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/16 18:18 UTC 版)
「北極振動」の記事における「北極振動の発生とその影響」の解説
北極振動指数が正の時は北極と中緯度の気圧差が大きくなり、その結果極を取り巻く寒帯ジェット気流(極渦)が強くなる。この結果、極からの寒気の南下が抑えられユーラシア大陸北部、アメリカ大陸北部を中心に平年より気温が高くなる傾向があり日本でも暖冬となる。逆に北極振動指数が負の時はジェット気流が弱くなるため極からの寒気の南下が活発となり、平年より気温が低めとなる。 特に北極振動指数が負を示した2006年冬(前年2005年12月〜同年2月)は日本でも寒冬となり、日本海側に記録的豪雪をもたらした平成18年豪雪の原因になったとされている。このように北極振動は北半球の冬季の気候に大きな影響を持っていると考えられている。また冬の気温の変化によって海氷や積雪の量が変化することにより中緯度の夏季の低気圧や高気圧の消長に影響し、夏季の気候にも影響を与えていることも指摘されている。日本付近では前の冬に北極振動指数が正であるとオホーツク海高気圧の勢力が増し、冷夏になるとされている。 北極振動による天候の変化は、アラスカ、カナダ、アメリカ本土中部・北部、ヨーロッパ、ロシア、アリューシャン列島付近に大きな影響力をもっており、特にイギリスや北欧諸国では非常に相関性が高い。日本を含めた東アジア北部にも影響は及んでいるが、影響範囲の辺縁に当たるため、エルニーニョなどの影響力が強く、結果的に現れる天候は複雑なパターンとなる。2005年12月の日本の寒冬に関しても、北極振動の値自体はそれほど大きくないため、他の要因によるところが大きいとされている。 2009年から2010年にかけての冬は、南東部を除くヨーロッパの広範囲やユーラシア中央部、南部を中心としたアメリカで低温、カナダ東部で高温となった。ワシントンD.C.で2月中旬に110年ぶりの大雪、フロリダ州でも氷点下を記録する異常低温となったほか、イギリスでも30年ぶりの低温や大雪となった。この主原因は、北極振動が近年稀にみる負の変動に振れたことと考えられている。1980年以降では最も強い負の北極振動が発生した影響で、北半球高緯度の各地に寒波や大雪がもたらされた。この影響は日本にも及んだが、シベリア高気圧の張り出しが弱かったこと、エルニーニョ現象の影響で全般的に高温となったことから、寒波は一時的なものであった。この振動の原因としては、秋にカナダで発生した成層圏突然昇温(SSW)などがきっかけとなった可能性が指摘されている。。 2012-2013年の冬は、日本で暖冬になりやすいとされるエルニーニョ現象が起こっていたにも拘らず、寒冬になった。これも北極振動が負にはたらいていたことが、ひとつの要因とみられている。
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