北極圏の磁石の山伝説
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/06 03:58 UTC 版)
磁石、および磁石で擦った鉄は南北方向を指す。この事実を記した最古の文献は、宋の沈括が1088年ごろに書いた『夢渓筆談』である。ヨーロッパでは、12世紀末には磁石で擦られた鉄が航海で使われていた。 そして大航海時代に入る頃になると、磁石の山があるとされる場所は、インド周辺から北極圏へと移動した。たとえばヨハン・ルイシュによって1508年に作られた世界地図では、北極圏に磁石の山が描かれ、「そこでは羅針儀は役に立たず、鉄製の船は戻ることができない」と記されている。さらにルイシュの地図には、磁石の山に向かって沈み込むような海流が描かれている。磁石の山の近くで海流が渦巻いている描写や記述は他の著者の作品にも見られる。これは、古くから知られていた船の難所であるロフォーテン諸島の渦潮が元になっていると考えられ、渦潮が船を引き寄せることと、磁石が鉄を引き寄せることが結びついたのではないかと推測されている。 他にも、オラウス・マグヌスが1555年の著書『北方民族文化誌』で、「極北には、それによって海の方位が決まる磁石の山がある」と書いており、ジローラモ・フラカストロやフランキスクス・マウロリクス(英語版)も北極圏にある磁石の山について述べている。 この時代の人々が磁石の山の存在を信じた大きな理由の1つが、前述の、磁石は南北方向を指すという事実だった。つまり、方位磁針が北を指すのは北極圏にある磁石の山に引っ張られているからだ、ということなのであるが、実のところ、15世紀以前には「磁石の力は天の極から来ている」あるいは「磁石の力は北極星から来ている」などと主張されていたため、磁石を引きつける源を磁石の山のような地球上の点に位置付けることは、それ自体が磁力への認識を転換させるものであった。
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