かがくごうせいせいぶつ‐ぐんしゅう〔クワガクガフセイセイブツグンシフ〕【化学合成生物群集】
化学合成生物群集
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化学合成生物群集(かがくごうせいせいぶつぐんしゅう、Chemosynthetic community)とは、太陽の光の届かない深海底などにおいて,海底から湧き出す熱水や冷湧水に含まれる硫化水素やメタンに依存する生物群集をいう。深海であるにもかかわらず,大型の生物も多く,魚類やシロウリガイなどの二枚貝やハオリムシ,ユノハナガニといった生物がみられる.これらの多くは,体内に硫黄酸化細菌やメタン酸化細菌といった細菌を共生しており,それらがメタンや硫化水素から生成したエネルギーに依存している(このようなシステムを光合成に対して,化学合成という).また,化学合成生物群集の生息密度は非常に高く,非湧水場,非熱水域に比べ富栄養であるため,化学合成を行っていない生物も多くみられる.メタンや硫化水素がわき出す環境があれば,浅海域でも化学合成生物群集は観察されうる(ただし報告例は少ない).
- 1 化学合成生物群集とは
- 2 化学合成生物群集の概要
化学合成生物群集
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/12 01:02 UTC 版)
冷水湧出帯に住む生物は極限環境生物として知られている。冷水湧出帯および熱水噴出口での生物学的な研究は、微生物と大型無脊椎動物をメインとしてきた。中間のメイオベントス(微生物よりは大きく、1ミリメートル以下のサイズの生物群)についての研究はあまりなされていない。 冷水湧出帯の遷移 (生物学)を考えてみる。この領域のエネルギーを最初に獲得するのはバクテリアである。冷水湧出帯では、バクテリアは群生してバクテリアマットを形成し、メタンや硫化水素、その他の湧出ガスの同化によってエネルギーを得る(生物的な化学合成)。 最初のステージにおいては、メタンは比較的豊富である。湧出帯の近くに貝類の群生が発生することがある。その多くはシンカイヒバリガイ属(Bathymodiolus)の貝である。これらは、直接には摂食を行わない。そのかわり、共生細菌がメタンからエネルギーを得ており、そこから栄養を得ている。これらの化学合成栄養二枚貝(化学合成細菌と共生している二枚貝)は冷水湧出帯の生物相の主要な構成種であり、主にキヌタレガイ科(Solemyidae)、ツキガイ科(Lucinidae)、オトヒメハマグリ科(Vesicomyidae)、ハナシガイ科(Thyasiridae)、イガイ科(Mytilidae)からなる。 これらの微生物の活動により、炭酸カルシウム (CaCO3) が生成される。それは海底に堆積し、岩石層を形成する。数十年後、これらの岩石にシボグリヌム科のチューブワーム(ハオリムシ)が蝟集し、貝類に混じって成長する。貝類と同様に、チューブワームは化学合成をする共生細菌(この場合、メタンではなく硫化水素を使う細菌)に依存して生存している。チューブワームは環境から硫化水素を取り込んでバクテリアに供給している。硫化水素は水中からだけでは無く、チューブワームの林の「根」のような構造を使って炭酸塩の固着層からも吸収される。チューブワームの林には数百の個体がいることがあり、それは海底から1メートル以上も成長することがある。 湧出は無限に続くわけではない。ガスの湧出が徐々に少なくなっていくにつれて、寿命が短く、メタンを多く要求する貝類(の共生バクテリア)が死にはじめる。この段階になると、チューブワームが冷水湧出帯の主要な生物になってくる。地層に硫黄分が含まれている間は、硫黄を吸収するチューブワームは生存する。チューブワームの一種 Lamellibrachia luymesi では、こうした条件で250年以上も生存した個体が確認されている。
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