化学反応に影響する因子
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/16 05:53 UTC 版)
実際に反応を行う、あるいは反応系を開発する場合、その反応を取り巻くさまざまな因子・条件の影響により、速度や成否が左右されることは少なからずある。この節では、化学反応について影響を考慮すべき因子・条件を、定性的、経験的な観点から概説する。反応機構は反応により多様であるため、以下の議論にあてはまらない例ももちろんある。詳細が分かっている反応については、反応速度式なども考慮に入れより定量的な考察を行うべきである。 温度 多くの反応は、より高い温度で行えば、系により多くのエネルギーが与えられるために速度が増加する。一般に、反応温度が 10 ℃ 上がれば反応速度は約2倍になる、というのが目安とされる。ただし、副反応を誘発する、中間体が分解する、反応の暴走を招く、など、温度を上げた結果として反応が失敗することもある。 濃度 多次反応の場合、反応混合物の濃度が高くなると、反応物同士の衝突の頻度が増すことによって反応が起こる確率が高くなり、速度が増加する。連鎖反応の場合は顕著となる。大員環合成などの場合では、分子内反応を分子間反応に対して優先させるために、しばしば高希釈下条件で行われる。また、0次、1次反応では濃度の効果は系の温度変化へ影響するだけにとどまる。濃度を調整する場合についても、副反応や暴走など、温度の調整の際と同様の問題を考慮する必要がある。 圧力 通常、気体が関与する反応は、圧力を上げると速くなる。気体の場合では圧力の上昇は事実上濃度の増加に等しいため、濃度と同様の議論も成り立つ。始原系と生成系でモル数が異なる場合は、平衡状態に達したときの各化合物の割合に圧力が影響する。 光 光はエネルギーの一形態である。また、反応の経路に影響を及ぼすこともある。反応によっては、副反応を防ぐために遮光しなければならないものもある。光を積極的に利用する光反応では、用いる光の波長や強さを考慮しなければならない。 触媒 反応に触媒を加えると、より活性化エネルギーの低い反応経路をとることができるようになり、正反応・逆反応の速さがともに増加する。触媒反応は当量反応とは異なり、触媒サイクルを円滑に回転させるため、触媒の活性化と安定化について考える必要がある。 表面積 不均一系触媒などを用いた表面反応においては、表面積が大きくなると反応速度も増加する。体積に対する表面積の割合が増せば反応の起こる位置が増え、反応はより速く起こる。固-液、気-液などの複相系、水層-油層などの複層系でも同様に、異なる相/層が接触する地点、あるいはその近傍で反応は起こるため、表面積や撹拌が重要になる。
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