劇画宣言
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/30 00:40 UTC 版)
活動に先んじて「劇画工房ご案内」という7名の連名による挨拶状(はがき)150枚が、新聞社、出版社や漫画家に向けて送付された。文面は辰巳ヨシヒロによる(原文は縦書き)。劇画宣言と呼ばれる。 劇画工房ご案内常に世の中は移りつつあります。鳥羽僧正に端を発したといわれる漫画界も日進月歩、昭和になって大人漫画と子供漫画とジャンルが二分され、大人漫画の中でも政治漫画、風俗漫画、家庭漫画、ストーリー漫画と樹木の如く、それぞれ方向を異とするものにわかれました。子供漫画の世界でも同じく、その読者対象によつてその分野が広がりました戦後、手塚治虫氏を主幹とするストーリイ漫画が急速に発達し、子供漫画の地位が向上、進歩の一途をたどりました。最近になって映画、テレビ、ラジオにおける超音速的な進歩発展の影響をうけ、ストーリィ漫画の世界にも新しい息吹がもたらされ、新しい樹が芽をふきだしたのです。それが“劇画”です。劇画と漫画の相違は技法面でもあるでしょうが、大きくいって読者対象にあると考えられます。子供から大人になる過渡期においての娯楽読物が要求されながらも出なかったのは、その発表機関がなかったことに原因していたのでしょう。劇画の読者対象はここにあるのです。劇画の発展の一助は貸本店にあるといってもいいと思います。未開拓地“劇画”劇画の前途は洋々たるものがあります。それだけに多苦多難なこともありましょう。ここに望まれるのは劇画ライターの一致協力です。この主旨にもとずいて、このたびTS工房、関西漫画家同人、劇画工房が合併、同志の劇画ライターが協力、新しいシステムによって劇画工房なる機関が発足いたしました。劇画工房のあり方というものを理解下さって諸兄のご声援をおねがいします。 劇画工房 さいとうたかを 佐藤まさあき 石川フミヤス 桜井昌一 辰巳ヨシヒロ 山森ススム K・元美津 この宣言文の宣伝効果は絶大で、業界に「劇画」という言葉が定着する。当時のトップ漫画家だった手塚治虫の元にも届けられ、手塚は後に自伝「ぼくはマンガ家」でこの挨拶状を取り上げている。 かくして、兎月書房より劇画短編集『摩天楼』シリーズが刊行される。当時の貸本漫画家のトップクラスが集結したとあってこのシリーズは大ヒットとなる。気をよくした兎月書房は時代劇物の『無双』シリーズも刊行。他の貸本出版社からも執筆依頼が殺到し「劇画工房」名義で多数の劇画短編集が出版される。
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