列車運行事業の状況
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/06 02:37 UTC 版)
国鉄の列車運行事業の列車運行事業者への承継にあたっては、多くの国で規模が大きく収益性が高い貨物を旅客から分割した。オープンアクセス義務化の対象外となった国内の地域旅客輸送事業については、多くの国で線区別や地域別にフランチャイズ制を導入し、国や関係地方自治体、またはそれに準じる法人が行う一般競争入札等により運行事業者が決定され列車運行が行われている。イギリスにあっては承継法人を特に設けず、入札による地域別のフランチャイズ制を導入して民間事業者に開放した。 現在はすべてのEU加盟国の列車運行事業者が、旧国鉄系および純民間の区別なく他加盟国の国鉄線上における貨物・旅客輸送サービスを手がけることが認められており、各国の輸出入の基軸である鉄道貨物輸送を中心に、数多くの民間事業者が新規に事業参入している。旧ドイツ連邦鉄道(DB)の貨物列車運行事業者、DBシェンカーレール(現DBカーゴ)のイギリス子会社DBシェンカーレールUK(現DBカーゴUK)の子会社、英ユーロカーゴレール(Euro Cargo Rail)がフランスとスペインにおける貨物列車運行事業を手がけるといった、自由化以前には見られなかった国際的な事業展開も一般的となった。 地域旅客輸送事業については、地域別などにさらに分割する国もあったが、旅客を4社分割(2001年)したポーランド国鉄(PKP)では2010年、PKPグループから離脱し国内各県政府共同出資企業となった地域旅客列車事業者の地域交通有限責任会社(PR、現Polregio)と標準軌線施設保有管理事業者であるPKPポーランド鉄道線株式会社(PKP PLK)が対立し列車運行に影響が出た上、同年冬のダイヤ改正ではPKP PLKおよび旅客・貨物列車運行事業者5社間の調整が改正当日までつかずに全国で列車運行が大混乱に陥り、政府の鉄道所管省庁である施設省大臣と、PKPグループ持株会社で国鉄事業の統括を兼ねるPKP株式会社(PKP SA)のCEOが、共に引責辞任に追い込まれる事件も起きた。 一方鉄道貨物では、旧オーストリア連邦鉄道(ÖBB)であるレールカーゴオーストリア(Rail Cargo Austria、オーストリア)子会社となった旧ハンガリー国家鉄道のMÁVカーゴ貨物輸送(MÁV Cargo、現レールカーゴハンガリア)のように、他国の旧国鉄系グループ傘下となるケースも多く見られる。特にDBカーゴはオランダNSカーゴ(現DBカーゴニーダーランド)、イギリスEWS(現DBカーゴUK)、デンマークDSB貨物(現DBカーゴスカンジナビア)など各国の旧国鉄系貨物列車運行事業者を次々に買収し傘下に収めているほか、フランス国鉄(SNCF)も同様に各国で大規模な買収を繰り返し、共に鉄道貨物における国際シェアを拡大している。この結果、特に西ヨーロッパの鉄道貨物輸送においてはDBグループとSNCFグループの2大グループがシェアの大半を占め、かつての国家独占とは異なる形態での寡占状態が生まれつつある。
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