優駿牝馬での斜行についての議論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/23 16:34 UTC 版)
「トールポピー」の記事における「優駿牝馬での斜行についての議論」の解説
最後の直線走路で当馬の行った斜行が、審議の対象となり降着にはならなかったものの、鞍上の池添は「継続的かつ修正動作の無い危険な騎乗」により開催日2日間の騎乗停止となった。近年の中央競馬におけるGI級レースの勝ち馬で、着順は変更されず騎手が騎乗停止になった例は、ミスターシービーが優勝した日本ダービーと、シンボリルドルフが優勝した皐月賞などしか例がない。この2つのレースは降着制度が存在しなかった時期に行われたものであり、降着制度が導入されてからは、トールポピーが優勝したオークスが初のケースとなった。この裁決が「灰色の決着」となったことで、各所で議論が沸きあがることとなった。 競馬評論家の柏木集保はレース回顧の中で「普通のレース(条件戦など)だったら文句なしに降着だ」と述べている。また、コラム内でも「大きな斜行は誰の目にも明らかだ」「トールポピーは天下のノーザンファームの生産馬であり、オーナーも社台系であるから、被害を受けた騎手が抗議できなかった」と述べ、現在の審判・裁決制度の問題点を批判した。 元騎手の田原成貴は「他の馬の進路を妨害したことは間違いない事実」「競馬会の裁決委員は昔からいい加減。馬主の力関係などで(裁決の内容が)大きく変わる。フェアーな裁決を期待するほうが間違っている」と述べ、JRAの体質を批判した。 元騎手の坂井千明は、「勝負事なのだから、多少乱暴な騎乗になってしまっても勝ちにいかなければ仕方がない。」「乗り方はともかく僕は池添の『勝ちたかった』という気持ちを評価してあげたい。」と述べ、池添を擁護したが、JRAの裁決の内容にはノーコメントである。 競馬記者の野元賢一は、今回JRAとメディアの間に認識のズレが生じた一因は、新ルールが浸透していなかったことだったと述べている。この新ルールとは、2005年1月に裁決基準が大幅に変更されたものであり、騎乗停止日数について、案件の性格に応じて2日、4日、6日以上の3段階に分け、重大な過失以外は4日とされ、以前に比べて軽減された。一方、過怠金は増額されて最高10万円となり、従来はまれに適用されていた過怠金10万円相当の件を、騎乗停止2日間にするとしたもの。また、ネット上や、上記の柏木集保にみられる「社台系の生産馬なので降着にされなかった」という意見に関しては「オークスは18頭中12頭が社台グループの生産馬で、トールポピーも、降着なら繰り上がり優勝となったエフティマイアも、同じノーザンファーム生産馬なので、世間にあまたある陰謀論の中でも、相当に稚拙な部類だろう。」としている。そして今回を総括して「降着なら話はすっきりするし、「社台優遇」のような都市伝説も一蹴できるし降着としないのなら、騎手も10万円で済ませておけば、ファン側から見た「一貫性」は確保される。世の中にどう見えるかという観点に立てば、今回の裁決は最悪である。」と述べているが、「主観レベルだけでなく、海外からも「世界一シビアな主催者」と見られているJRAが、ファンやメディアにこれほど強い不信感を持たれている。この状況は不幸と言うほかない」と一定の同情も見せている。 2010年にサンケイスポーツがJRAに行ったインタビューにおいて、回答したJRA審判部の部長補佐はこの競走について「この時の映像は、裁決委員の国際会議でも上映しましたが、米、仏の担当者も“着順を変更しないだろう”という意見でした」と述べている。
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