傑作「エレジー」
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グレイが代表作『田舎の墓地で詠んだ挽歌』を書き始めたのは1750年、バッキンガムシャーのストーク・ポージス(Stoke Poges)の教会の墓場においてだとされる。未完のまま数年間放置され、1750年に完成した。1751年2月、ロバート・ドッズリー(Robert Dodsley)によってこの詩が出版されると、文学界にセンセーションを巻き起こした。その思索的で落ち着きのあるストイックな調子は大きな賞賛を受け、また剽窃・模倣・引用され、ラテン語やギリシャ語に翻訳された。現在でも『田舎の墓地で詠んだ挽歌』は人気があり、英詩のなかで、もっとも頻繁に引用される作品のうちの一つである。1759年のアブラハム平原の戦い(Battle of the Plains of Abraham)の後、イギリスの将軍ジェームズ・ウルフは部下の将校たちにこの詩を朗読して聞かせた後、「諸君、私は明日ケベックを落とすよりもこの詩を書きたい」と言ったという。この詩に出てくる「ivy-mantled tow'r(ツタに覆われた塔)」という有名な言葉は、中世初期のアプトン(Upton)のセント・ローレンス教会(Church of St Laurence)のことである。 『田舎の墓地で詠んだ挽歌』は、その美しさ、その技量によってすぐに認められ、この詩の影の中(影響下)で詩を書く詩人たちは「墓場派」と呼ばれた。この詩には多くの優れた文句が含まれていて、それらは一般の英語辞書に加えられ、他の作品でも言及された。具体的には、以下のようなものがある。 Far from the madding crowd(遙か群衆を離れて) - トーマス・ハーディの小説、およびその映画化タイトル。 The paths of glory(栄光の道) - スタンリー・キューブリック監督『突撃』の原題でもある。 Celestial fire(天の火) Kindred spirit(気心の合う人) 他にもグレイは、親友ウォルポールの猫を歌った擬似エレジー『愛猫を弔ううた(Ode on the Death of a Favourite Cat, Drowned in a Tub of Gold Fishes、直訳すれば「金魚鉢で溺れたお気に入りの猫の死に寄せるオード」)』といった軽い詩も書いた。「What female heart can gold despise? What cat's averse to fish?(どんな女性の心が黄金を軽蔑しようか? どんな猫が魚を嫌がろうか?)」と質問してから、「a fav'rite has no friend!(お気に入りは友達を持たない!)」「know one false step is ne'er retrieved(1つのつまづきは決して取り戻せないと知れ)」「nor all, that glisters, gold(輝くものすべてが黄金ではない)」とことわざのような答えを出す。ウォルポールは後にストロベリー・ヒル・ハウスで、その運命の陶器を台座に乗せて展示した。グレイの現存している書簡にも、その鋭い観察眼とユーモア溢れる遊び心が現れている。 さらに1742年の『イートン学寮遠望のうた』には「where ignorance is bliss, 'tis folly to be wise(無知は喜び、賢いことは愚か)」という名言がある。
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