人物・研究・思想
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/01/26 01:46 UTC 版)
「イレーヌ・テリー」の記事における「人物・研究・思想」の解説
2018年のRevue Espritでの講演で、テリーは、文学から社会学に転向し、家族を研究テーマに選んだ理由として、1970年代初頭の「私的なことは政治的なことだ」をテーマに展開した女性解放運動に参加し、家族という私的領域の重要さに気づいたことを挙げ、歴史的に長いスパンで見た社会や制度の変化を重視することに研究の主眼を置くと述べている。 1990年代半ば以降、とくに家族問題の専門家として、同性カップルの権利保障(同性パートナーシップ、同性婚、同性親家族等)、精子や卵子などの提供による生殖医療で生まれた子どもの親子関係や出自へのアクセスといった今日の家族をめぐる重要な諸問題について、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌で積極的に発言してきた。 テリーのアプローチの特徴は、こうした問題を、今日進行している結婚・家族・親族関係全般における大きな変容——テリーによれば、この変容は、人類史上初めて民主主義社会において男女平等が進展したことに起因するもので、伝統的な家族を擁護する人々が言うように、個人主義が行き着いた末の結婚や家族の崩壊を意味しているわけではまったくない ——の中に位置づけて、独自のジェンダー関係アプローチ を用いて分析していることである。今起きていることは「性の区別の再編」と呼べるものだという 。 テリーは家族関連の二つの重要な法改正に大きく貢献した。第一に、1999年の異性カップルにも同性カップルにも結婚に準じた権利を保障した「パックス(民事連帯契約)法」である。これによって、同性カップルは初めて法的地位を得たが、それは、前年に雇用連帯大臣及び法務大臣の要請により彼女が作成した報告書 Couple, filiation et parenté aujourd’hui (「今日のカップル、親子関係、親族」)における提案を受けたものである。第二に、2013年の同性婚と同性婚カップルによる養子縁組を認めた「みんなのための結婚法」である。法案の閣議決定後に開かれた国民議会法務委員会と元老院法務委員会の二つの参考人質疑において、テリーは、人々の意識は変化しうるものであり、同性カップルを排除している結婚制度が、今日、不公正と思われているなら、この制度を改革すべきだと力説した。 社会問題に深くコミットする学者として、この法律の制定以後も、養子縁組あるいは生殖補助医療によって形成された家族、再編家族、親が異性カップルの家族、同性カップルの家族、これら多様な家族に共通する論理によって貫かれた親子関係を基本にした抜本的な家族法の改正のための発言を続けている 。
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