人工ヒレ開発の始まり
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/04 22:18 UTC 版)
「悠 (人工鰭のウミガメ)」の記事における「人工ヒレ開発の始まり」の解説
このモデルは9月10日に悠へ装着の試験と経過観察がなされ、そして9月12日にも大阪大学チームが水中での悠の動きを観察し、その後、義肢メーカーが装着感を確認した。また悠は9月12日の人工ヒレを用いて、前回よりも人工浜を力強く這うことができた。 悠は9月12日から10月14日までの期間、第5モデルを装着し続けた。関係者は、この長期間の装着試験が成功裏に終わったと感じたが、10月16日に行われたプロジェクトの会合では予想に反して、大阪大学のチームからは、悠は人工ヒレをつけると腕(前肢)の振りが小さくなってしまうこと、また、東京大学海洋研究所のチームからは、悠が人工ヒレをつけると遊泳スピードも遅くなってしまうことが報告された。 大阪大学チームが9月10日の神戸大学海事科学部の回流水槽などで行った観察は、左右の側面や下面の3方向から泳ぐウミガメ(悠と照)を撮影し、また人工ヒレをつけた状態の悠も同じく撮影し、のちに、3次元運動解析を行い、その解析結果は以下とまとめられた。 下面から解析してみると、健常なウミガメは鰭(ひれ)を前方から後方まで、円弧上の軌跡をとって胴体まで掻き切っているのに対して、人工鰭を装着した悠は関節が固定された関係で、前方から後方まで直線状の軌跡を描くことがわかった。また、側面からの解析においても人工鰭によって捻り(ひねり)が制限されているということが分かった。次に、捻りが推力にどう影響しているかを調べるために、翼素理論を使って推力を算出した。鰭の動きと捻りからウミガメの翼への流入速度と流入角が得られ、ウミガメの鰭を翼とみなし、翼素理論を用いることで、悠と健常状態のウミガメ(照)の推力を求めることができた。捻りの制限によって確かに推力が減ることが明らかとなった。以上の結果から2009年9月時点の人工鰭のモデルでは悠は本来の泳ぎを取り戻せていないと判断でき、更なる改良が必要であると考えられる。 (カッコ内は補記。) この原因は、以下のように考えられた。 (1) 人工ヒレを装着したことにより、腕(前肢)の可動範囲が狭くなり、遊泳力が低下した。(2) 前肢を失った悠ちゃんは、前肢に負荷が無くなり、筋力が衰えてしまった。 このため、プロジェクトはまず、遊泳力が上がる人工ヒレ開発を目指すことになった。 12月5日、悠は新しいモデルを作るために両前肢基部の型取りを受けたのち、避寒(越冬)のため日和佐うみがめ博物館(徳島県美波町)へ移送された。悠は装着試験によって褥瘡(じょくそう)様の傷が生じてしまい、その治療のためしばらく養生することになった。 2010年3月17日に開かれた会合では、既に第6モデルの完成が報告されたが、悠の傷の治療が優先であるため装着試験は行わず、また4月24日には、悠を日和佐うみがめ博物館から神戸市立須磨海浜水族園の大水槽(波の大水槽)に移送したが、蓐瘡はまだ治療中であるため、ここでも人工ヒレの装着はなかった。その後の5月24日の会合でも悠は治療中と報告された。
※この「人工ヒレ開発の始まり」の解説は、「悠 (人工鰭のウミガメ)」の解説の一部です。
「人工ヒレ開発の始まり」を含む「悠 (人工鰭のウミガメ)」の記事については、「悠 (人工鰭のウミガメ)」の概要を参照ください。
- 人工ヒレ開発の始まりのページへのリンク