事故までの状況
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/11 03:21 UTC 版)
「日本航空ニューデリー墜落事故」の記事における「事故までの状況」の解説
事故現場からはフライトレコーダーとコックピットボイスレコーダーが回収され、解析が行われた。フライトレコーダーの記録によると、事故機は途中まで通常通りの着陸経路を飛行していたが、高度2100フィート(ILSによる誘導を受け始めるまで維持するべき高度)まで降下しても水平飛行に移らず、事故機はまるで空港が墜落地点(空港の滑走路端から23キロメートルも手前)にあるかのような飛行経路で降下を継続していた。また、ボイスレコーダーに残された会話によれば、墜落数秒前まで3人のパイロットはまったく異常に気づいておらず、操縦を担当していた副操縦士は目視したヤムナー川の護岸工事の照明を滑走路の照明だと思い込んでいたようである(しかし、当日は砂塵により視界はあまり良くなく、進入前にその旨を確認し合っている)。外気温が45℃であったため、航空機関士は「パワー(冷房)少しいただけますか?」と求め、機長は「どんどん冷やしてくれ」と指示し、航空機関士の「All freon on(冷媒全開)」に続いて「ハハハ」と機長の笑い声も記録されており、普通の会話で客室乗務員に伝えている。「ギアダウン」、「フラップ35、フルダウン」と報告する声が残っている一方、規程上は行わなければならないはずの降下1000フィート毎の高度確認をする声はなく、高度が異常に低下していることにまったく気づいていなかったと推測されている。また、「ファイナルフラップ」の読み上げに続いて、「セットー、だけど降りてないね」とも聞き取れる声が記録されていた。 このような状況のため、着陸を継続するか着陸復行するかを決意する高度である「デシジョン・ハイト」を過ぎても誰もそれを指摘せず(本来は声を出して知らせるべき高度である)、墜落9秒前、副操縦士が「ランウェイ・イン……ゴーアヘッド」と着陸する確認を取り、墜落7秒前に地上まで35メートルの高さになってから航空機関士が「デシジョン・ハイト」と普通に声をかけるような状態だった。墜落5秒前に機長が滑走路が無いことに気付いて「パワー、パワー」と慌てた言葉を叫び、墜落2秒前にエンジンが推力を上げ始めたがもはや遅く、機体はジャムナ川の対岸水際に一旦主車輪が接地して(現場調査で接地跡が確認されている)再び浮き上がった直後、護岸工事中の土手に激突した。
※この「事故までの状況」の解説は、「日本航空ニューデリー墜落事故」の解説の一部です。
「事故までの状況」を含む「日本航空ニューデリー墜落事故」の記事については、「日本航空ニューデリー墜落事故」の概要を参照ください。
- 事故までの状況のページへのリンク