中東の緊張
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/08 14:04 UTC 版)
欧米などの孤立化政策に対してイランは反発した。一方でトルコ、ブラジル、ベネズエラ、キューバ、エジプトなどはイランの平和的核エネルギー開発を支持した。 中でもトルコはイスラム教徒がほとんどを占める国でありながら、イスラエルとは建国以来国交を持つ国であり、他のイスラム圏とは一線を画して欧米圏とイスラム圏との橋渡し的な役割を果たしている国であった。しかし、トルコは2008年末にイスラエルによるパレスチナ自治区ガザ大規模攻撃をきっかけにイスラエルとの関係が悪化してきていた。2010年5月31日、イスラエルが封鎖を続けているガザへの支援物資を運んでいたトルコの人道支援団体を中心とした国際支援船団を、イスラエル軍が公海上で急襲し、乗船者のトルコ人などが殺害される事件が発生。イスラエルは謝罪拒否を断言、トルコ側は「関係は二度と修復できない」として、以来中東との一切の仲介を拒否した。これにより欧米圏とイスラム圏とのチャネルが失われ、イスラエルと敵対しているイランとの間で緊張が高まった。 国際社会は、「イスラエルがイランを空爆し核施設を破壊するのではないか」と危惧した。過去にもイスラエルは「自衛」を理由に周辺国への核関連施設への先制攻撃をしかけ(1981年のイラク原子炉爆撃事件、2007年のシリアの核関連施設の空爆)、核保有を阻止してきた経緯がある。しかしイランへの攻撃は他の周辺諸国の上空を通過して行わなければならず、中東諸国はイスラエルによる領空侵犯阻止を大義として、イランへの攻撃を阻止する効果があった。ところが2003年にイラク戦争が勃発、2011年にはシリア騒乱が発生し、両国に制空権を行使できるだけの軍事力維持が期待できなくなっていることから、今度はイランへの先制攻撃が懸念された。ただし米無人偵察機が撃墜されるなど中国、ロシアの軍事技術を供与されているイランへの攻撃は容易ではなく、また中国、ロシアともにイランへの攻撃はイラク戦争のように座視はしない旨を明言していた。 イスラエルの隣国レバノンには、特にイランから多大な支援を受けて激しくイスラエルと対立しているヒズボラがあり、両国の緊張と悪化によって中東地域全体に不安が広がった。
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