上昇時のトラブル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/26 09:21 UTC 版)
メインエンジンの点火シーケンス中に、スペースシャトルの第3(右)エンジンへの酸化剤の注入口を塞ぐために使用された金のピンが緩んで激しく排出され、エンジンノズルの内面に衝突し、水素を含む3つの冷却チューブを破裂させた。これにより、主燃焼室に向かう漏れが生じた。この異常事と、右エンジンの制御装置によるリークに対する自動応答は、打上げ実施基準を下回ることはなく、正常に打ち上げられた。しかし、打上げから約5秒後、電気系統のショートにより、中央エンジンの一次デジタル制御ユニットDCU-Aと右エンジンのバックアップユニットDCU-Bが無効になった。中央と右のエンジンは残りのDCUで軌道への飛行を続けた。各エンジン制御装置に供えられた予備のDCUがコロンビアとその乗組員を潜在的な災難から救った。もし飛行中に2つのエンジンが停止すれば非常に危険な緊急事態を招き、成功は保証されなかった。電気系統のショートは、脆弱な配線が露出したねじの頭で擦られたのが原因であったと後に明らかになった。この出来事により、全てのオービタで配線の再点検が行われた。 右エンジンの漏れによりSSMEの2つのプレバーナや主燃焼室で漏れた水素が燃焼していないため、制御装置は主燃焼室圧力として間接的に測定された出力や推力の低下を検知した。エンジンの出力を指示されたレベルまで戻すために、制御装置は酸化剤バルブを通常以上に開いた。水素漏れに加え酸化剤消費量が増加し、エンジンにとって適切な酸素/水素混合比6.03から逸脱し、正常よりも熱くなった。上昇中に増加した酸化剤消費量により外部燃料タンクが液体酸素レベルの低さ検知し、予定された燃焼期間の直前に3つのエンジン全てが早期停止した。エンジン停止時の速度は、予定速度(7.77 km/s) に対して 4.6 m/s 不足していたが、機体は安全に目的の軌道に達し、ミッションは計画通り完了した。この事故により、これまで行われていたように、損傷した酸化剤注入口に栓をするのではなく、除去して交換するように、メンテナンス手順が変更された。 この3日前、最初の打上げが試みられた際には、点火シーケンスに入る直前の打上げ7秒前に打上げが中断された。3つのメインエンジンが位置するスペースシャトル船尾の水素ガス濃度を監視していたオペレータが、危険なほど高い値を誤って表示する検出器に騙されて、カウントダウンを手動で中止したためであることが後に判明した。
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