上下関係の弊害
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/17 02:45 UTC 版)
上司や上官に対する部下や下僚からの異論を許さず、下を萎縮させるような峻厳な上下関係は、軍隊や仕事やスポーツにおけるチーム内の意思疎通を妨げることもある。結果として「上は絶対に無謬だ」「上の誤った判断が誰にも修正されない」「下の者が気づいた異変や状況変化が上に伝わらない」といったことから、チーム全体の潰滅(敗北など)を導きやすい。 国内の景気・消費活動が冷え込んでいる状態であるにも関わらず、バブル景気時代のような異常な好景気の状態下でしか通用しないような経営方針や商品開発や企画などを上層部が採用し、それらに対して現場や部下の人間が提言を行ったり、異を唱えることができないまま、そのままそれらがその組織全体の方針となる。 船舶の操船において、「船長が座礁させるか、他の船と衝突するまで甲板士官らは目を丸くしたまま沈黙を守る」ことは異常とは言えない。 航空業界に上意下達の弊害を思い知らせたのは、1977年に起こったジャンボ機同士の衝突事故、テネリフェ空港ジャンボ機衝突事故であった。この事故は双方の飛行機および管制官の間にさまざまな思い込みがあったことが原因となっているが、特に一方の当事者となったKLM機内では、クルーの内の航空機関士がパンナム機との衝突の可能性に気づいていたにもかかわらず、上司である機長がその可能性を否定したために再度機長に口を挟むことに萎縮してしまい、結果両機が正面衝突する悲劇につながった。 この事故以後、航空業界では上意下達より、乗員相互の合意による意思決定、操縦室内の「権威勾配」の適切さが強調されるようになった。これは航空業界でCRM(crew/cockpit resource management、人的資源の管理)として知られているもので、現在ではすべての航空会社の基礎的な安全管理方式や訓練体系となっており、医療など判断ミスが破滅的な結果につながる業界へも導入されている。
※この「上下関係の弊害」の解説は、「上下関係」の解説の一部です。
「上下関係の弊害」を含む「上下関係」の記事については、「上下関係」の概要を参照ください。
- 上下関係の弊害のページへのリンク