ローバー内部のトルクを利用した移動機構の採用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/08 03:51 UTC 版)
「ミネルバ (ローバー)」の記事における「ローバー内部のトルクを利用した移動機構の採用」の解説
MUSES-C計画以前、小惑星など太陽系小天体探査用のローバーはほとんど前例がなかった。ただ、1988年7月に打ち上げられたソ連の火星探査機フォボス2号には、火星の衛星であるフォボスを探査するローバーが搭載されていた。このローバーに関する情報は少ないが、質量は約45キロで、バネを利用してホップしながら移動するローバーであったと伝えられている。また先述のように日本製ローバーとともに小惑星を目指すNASAのMUSES-CNは車輪型の移動機構を備えていた。 日本製のローバーは小惑星表面をホップしながら移動する移動機構を採用する方針が固まった。その後ローバーの突起で表面を突くことでホップする方法、カエルの脚のような方法でホップするやり方など、ローバーをホップさせる様々な案が出された。ミネルバ開発の中心となる吉光徹雄は、まず三角パックのような形状の四面体の各頂点にハエタタキのような部品を取り付け、モーターで駆動されるハエタタキのような部品が小惑星表面を叩くことによって移動するメカニズムを提案した。議論を進めていくうちにローバー外部に何らかの可動部分を持ち、小惑星表面を叩いたり突くことによってホップする方式では、凹凸が激しい表面の場合叩いたり突いたりできない可能性が指摘され、またローバー外部の可動部分を塵などから保護する必要もあった。結局吉光のアイデアからハエタタキのような部品を取り除き、ローバー内のモーターの回転によって発生したトルクによってローバーを回転させ、小惑星表面との反力でホップするというアイデアが生み出された。 この方式ではローバー外部に可動部がないため、小惑星表面にあるといわれていたレゴリス対策が不要となり信頼性が高まる。またホップした後、飛行中のローバーの姿勢制御を移動機構と同じモーターで行える。MUSES-Cが目指す小惑星のような重力の極めて小さな環境では、移動機構がギア無しの小型モーターの回転で良いため軽量化が可能である。モーターの制御を行うことにより小惑星の脱出速度を超えない範囲でローバーのホップする速度を調整することができるため、車輪を用いた移動機構よりも速い移動が可能であるなどの利点があった。1998年、吉光が提案したローバー内部のモーターによって発生するトルクを利用する移動機構が、日本製小惑星探査ローバーの移動機構として採用されることとなった。
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