リアリティ演出の工夫
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/14 13:56 UTC 版)
現在ではブームの一段落も手伝って仮想戦記ジャンル内での作品の淘汰が行われ、その過程で旧来主流だった「ご都合主義的」な作品群は廃れ、新たに説得力とリアリティのある作品が評価されることが一般的になっている。こうした現在の仮想戦記ジャンルの読者が当然のように受け止めている、架空戦記にリアリティを与えることを重視しその手法を体系化させた。佐藤の出現以前は欧米の小説家にこの手法の萌芽が見られた程度で、徹底する創り手はほとんどおらず、そのような本の需要もなかった。檜山良昭のようにタイムマシンを登場させたり、荒巻義雄、志茂田景樹のように前世からの転生といったようなオカルト的要素を交える内容が多かった。 一方、1980年代に隆盛を極めたボードゲームはプレイを通じ因果関係を理解出来る環境であり、またゲームは目的に応じて製作されるものでありその点についてゲーム雑誌上で多くの議論が行なわれてきた。佐藤も当時からそうした記事を発表している。しかし、ゲーム雑誌故に文章化については説明書とリプレイ記事程度しか存在せず、ゲームと異なる架空戦記作品へはこうした発想が十分に移植されていなかった。それを長編小説のレベルまで昇華させた最初期の作家が佐藤である。目標とする背景を作り上げるため、改変を何回も繰り返して史実と全く異なる結果を得ようとした のも佐藤の成果であり、結果としてカオス理論としてのバタフライ効果的な発想をある程度取り込み、演出することにもなった。 こうした作品に対しての考え方から、他の仮想戦記作家達と同じく太平洋戦争をテーマとした『目標、砲戦距離四万!』では個々の戦術レベルの戦いに絞って短編を複数作成し相互の関連は持たせていない上、日本が戦争に勝利する短編はある程度荒唐無稽さに目を瞑った旨を冒頭で述べている「幻想編」など一部に止まり、局地的な勝利に止まる短編が多い。また、『戦艦大和夜襲命令』では戦争の帰趨全体を採り上げることが目標であるため、時系列で最初の戦いの結果が次の戦いに影響し、手持ちの兵力や支配領域が変化した状態を前提としているため、双方が史実とは異なる作戦を立てている。
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