ライシテと女性の権利・自由
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/05 21:14 UTC 版)
「ライシテ」の記事における「ライシテと女性の権利・自由」の解説
公的領域から宗教的な要素を排除し、宗教への服従から国民を解放し、教育、信教、思想・良心、そして表現の自由を確立したライシテは、伝統的な家父長制からの解放を含む女性解放、女性の権利の確立にもつながった。 ライシテ法への道を切り開いたコンドルセは女性のセクシュアリティと精神を無条件に教会の権威に従わせようとした聖職者を非難し、同じくジュール・フェリーは「女性を服従させる者はすべてを服従させる。カトリック教会が女性を排除しなかったのはこのためであり、女性たちから民主主義を奪ったのもこのためだ」とした。 これらの先達の言葉に言及しつつ、スカーフ論争のさなか、フェミニズムの視点からこれを分析し、『共和国を覆うヴェール (Un voile sur la République)』を著したミシェル・ヴィアネス(フランス語版)は、「男性が男性のために作った宗教には常にミソジニーが存在し、女性差別につながった。・・・ライシテは宗教の重圧から女性の身体と精神を解放した」と述べている。 イスラム女性のヴェールについては、一方で「恥じらい」、「名誉」、「男たちの欲望の対象とならぬように努める」、「道徳や伝統、家族の絆、女性の貞節」を表わすとされるが、他方で、サウジアラビア、カタール、イランなどではヴェール着用が義務づけられており、こうした男性による女性の抑圧、男性への服従から解放されるために「スカーフを脱ぎ捨てる女性」、「スカーフ着用義務に抗議する」女性も増えている。 こうした状況にあって、フランスの「宗教的標章規制法」については、「イスラム系の少女たちが、イスラム系の家庭やイスラム系の男性の側からの、種々の拘束や差別の犠牲者であるとし、彼女たちをその拘束や差別から解き放つことによって統合を推進することを謳っていた」が、これが果たして真の解放なのか、イスラム系の女性たちが着用を義務づけられている宗教的標章が公共空間で禁じられるなら、「まさしく宗教的性差別によって支配されている共同体的空間に彼女たちを追い返すことになるのではないか」といった議論もある。 2004年の「宗教的標章規制法」の後、2010年には「尊厳及び男女平等を侵害する過激な宗教実践はフランス共和国の価値に反する」等の理由により、公共の場におけるブルカの着用を禁止する法案が可決された。
※この「ライシテと女性の権利・自由」の解説は、「ライシテ」の解説の一部です。
「ライシテと女性の権利・自由」を含む「ライシテ」の記事については、「ライシテ」の概要を参照ください。
- ライシテと女性の権利自由のページへのリンク