メモリーT細胞の亜型
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/14 02:45 UTC 版)
「メモリーT細胞」の記事における「メモリーT細胞の亜型」の解説
セントラルメモリーT細胞(TCM、Central memory T cells)は、CD45RO、C-Cケモカイン受容体タイプ7(英語版)(CCR7)、およびL-セレクチン(英語版)(CD62L)を発現する。セントラルメモリーT細胞はまたCD44(英語版)を中等度から高度で発現する。このメモリー亜集団は、一般的にリンパ節と末梢循環で見られる。 エフェクターメモリーT細胞(TEM、Effector memory T cells)はCD45ROを発現するが、CCR7およびL-セレクチン(英語版)の発現を欠いている。また、CD44(英語版)の発現は中等度から高度である。これらのメモリーT細胞は、リンパ節ホーミング受容体を欠いているため、末梢循環や組織に見られる。TEMRAは、ナイーブT細胞に通常見られるマーカーであるCD45RAを再発現する最終分化型エフェクターメモリー細胞(Terminally differentiated effector memory cells)の略である。 組織常在型メモリーT細胞(TRM、Tissue resident memory T cells)は、再循環することなく組織(皮膚、肺、消化管など)を占有する。TRMと関連しているいくつかの細胞表面マーカーは、CD69およびインテグリンαeβ7(英語版)(CD103)である。ただし、異なる組織で見られるTRM細胞は、異なる細胞表面マーカーを発現していることに注目に値する。CD103+ TRM細胞は上皮や神経組織に限定的に局在しているのに対し、マウスの唾液腺、膵臓、および女性生殖管に局在するTRM細胞はCD69もCD103も発現していない。TRM細胞は、病原体に対する防御免疫において主要な役割を果たしていると考えられている。研究ではまた、TRM細胞には保護と調節の二重の役割があることも示唆している。TEM細胞と比較して、TRM細胞は防御免疫関連サイトカインを高レベルで分泌し、増殖マーカーKi67の発現量が低い。これらの特徴は、TRM細胞の長期的な維持と、抗原侵入に対する迅速な応答と不必要な組織損傷の回避との間で、バランスを保つのに役立つのではないかと提案された。機能不全のTRM細胞は、乾癬、関節リウマチ、炎症性腸疾患などの自己免疫疾患に関与している。TRM細胞に特異的なのは脂質代謝に関わる遺伝子であり、他のタイプのT細胞に比べて約20~30倍の活性があり、高い活性を持っている。 バーチャルメモリーT細胞(TVM、Virtual memory T cell)は、強力なクローン増殖イベントの後に発生しないという点で、他のメモリー亜集団とは異なる。したがって、この集団は全体として末梢循環内に豊富に存在するが、個々のバーチャルメモリーT細胞クローンは比較的低い頻度で存在する。一説には、恒常性増殖がこのT細胞集団を生み出しているというものがある。最初に記述されたのはCD8バーチャルメモリーT細胞であったが、現在ではCD4バーチャルメモリーT細胞も存在することが分かっている。 メモリーT細胞の他の多くの亜集団が示唆されている。研究者らは、幹メモリー細胞(TSCM、Stem memory T cells)を研究してきた。ナイーブT細胞と同様に、TSCM細胞はCD45RO-、CCR7(英語版)+、CD45RA+、CD62L+(L-セレクチン(英語版))、CD27+、CD28+、IL-7Rα+であるが、CD95、IL-2Rβ、CXCR3、LFA-1を多量に発現し、メモリー細胞に特有の多数の機能的属性を示す。
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