ボールドウィン社の展開
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/13 17:09 UTC 版)
「鉄道車両の台車史」の記事における「ボールドウィン社の展開」の解説
この、ブリル社による多様な電車用2軸ボギー台車製品の展開とその普及に立ちはだかったのが、A形台車、およびこれの荷重上限拡大版であるAA形、それに路面電車用低床台車のL形およびR形を展開したボールドウィン・ロコモティブ・ワークス (Baldwin Locomotive Works:BLW) 社である。 元来がアメリカ最大の生産力を誇った大手蒸気機関車メーカーであり、2軸ボギー台車のルーツと言うべき蒸気機関車用2軸先台車の設計をインターアーバン用台車に展開する形で1900年代後半にこの市場に参入したBLW社は、釣り合い梁と揺れ枕吊りを備えたMCB規格準拠のA形台車を第1陣として、「世界の機関車工場」と謳われたその量産力に裏付けられた低価格と短い納期、それに長年の機関車設計で得られた優れた設計による高い信頼性を武器にインタアーバン向け車両用台車の市場で急速に台頭した。 特に処女作でありながら空前のヒット作となったA形は、78-25Aのように軸距(インチ数)と心皿上限荷重(×1000ポンド単位)を数字で示し、その後に形式名を示すアルファベットを付与するその型番が示すとおり、顧客の要求に応じて自由にそれらのスペックを変更可能とされており、ボールドウィンの創案になる優美な半月形の鍛造釣り合い梁、複列のコイルばねを天秤式で側枠と接続する巧妙な釣り合い梁のばね受構造、丈夫で変形時の修理の容易な可鍛鋳鉄(マリアブル)を使用する軸箱守(ペデスタル)、入手の容易な一般鋼材を組み合わせたトラス構造を採用した側枠など、実用的、かつ製造および保守の容易性に留意したその合理的な設計を見れば大ヒットを納得できる、優れた台車であった。 このA形で示された基本コンセプトはその強化版に当たるAA形をはじめとする以後の同社製台車各種でも継承されており、特にBrill 27GE→76E・77E対抗として送り出されたL形およびR形でも釣り合い梁関連の特徴以外は全て継承された。 ライバルであるブリル社が量産では有利であるものの巨額の設備投資を要する製造法と各部機構の特許取得に邁進してコピー品との差別化やライセンス供与ビジネスの展開を図ったのに対し、入手の容易な部材を使用し生産性に優れた同社製台車は、普及期と第1次世界大戦の勃発が重なって入手難の状況がしばらく続いたためもあって、むしろそのデッドコピー品がブリル台車を駆逐する勢いで世界中に大量に普及することとなった。
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