ホット・ジュピターの半径異常
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/13 04:34 UTC 版)
「ホット・ジュピター」の記事における「ホット・ジュピターの半径異常」の解説
巨大ガス惑星のうち、半径が大きく非常に低密度なものは、"puffy planets" やホット・サターン、あるいは低密度ホット・ジュピターと呼ばれることがある。ホット・サターンという名称は、このような惑星は土星の密度と類似していることから来ている。このような惑星は主星に近い軌道を持ち、主星からの強い加熱と惑星内部での熱源の両方の効果が組み合わさって大気が膨張していると考えられている。半径が大きく低密度な惑星は惑星の半径を測定できるトランジット法で発見されており、発見順に HAT-P-1b、CoRoT-1b、TrES-4、WASP-12b、WASP-17b、ケプラー7b などがある。ただしこれらの分類に明確な定義があるわけではない。半径を測定できない視線速度法で発見されたホット・ジュピターの中にも、puffy planets に相当するものがあると考えられる。これらの惑星の大部分は2木星質量より軽く、より大きな質量を持つ惑星の場合は強い重力のためおおむね木星と同程度の大きさに保たれると考えられている。 主星からの輻射による惑星表面の加熱を考慮した場合でも、多くのホット・ジュピターの半径は理論的に予測される値よりも大きいことが分かっている。強い輻射を受けている場合は冷たい巨大ガス惑星と比べてある程度半径は大きくなるものの、これで説明が出来るのは最大でも木星半径の1.2〜1.3倍程度であり、これよりも大きな半径は説明することが出来ない。これはホット・ジュピターの半径異常 (英: radius anomaly) として知られている。 半径異常の原因として複数の仮説が提唱されている。大きく分けると、形成初期に大きかった半径が何らかの原因で収縮が遅くなったという考え方と、惑星内部に何らかの熱源が存在して半径を膨張させているという考え方の2つがある。例えば後者のうちの一つに、惑星の磁気圏と大気の流れの間の相互作用によって惑星内部に誘導電流が発生し、その電流によるジュール加熱によって内部が加熱されて大気が膨張するという説がある。惑星が高温であるほど大気の電離度も大きくなり、相互作用も強くなるため大きな電流が発生する。そのためより加熱が強くなり惑星を膨張させると考えられる。この理論は、惑星の平衡温度と膨張した惑星半径の間に相関が見られるという観測結果と矛盾しない。 その他の仮説としては、大気の不透明度が大きいために形成時の熱が逃げにくくなり、半径の収縮 (ケルビン・ヘルムホルツ機構も参照) が遅くなっているという説、惑星内部の対流構造が変化することによって熱が逃げにくくなっているという説、大気循環に伴う乱流によって内部が加熱されているという説、恒星との潮汐力や熱潮汐による内部加熱が発生しているという説などが提案されている。 これらの仮説のうちいずれか、あるいは複数が組み合わさってホット・ジュピターの半径異常を引き起こしている可能性があるが、現時点では明確な答えは出ていない。ただし上記の様に恒星から受ける輻射が強く惑星の平衡温度が高いほど大きな半径を持つ傾向があることが観測から判明しているため、主星の輻射が何らかの形で関与していると考えられている。
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