ペンシクロビルとは? わかりやすく解説

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ペンシクロビル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/15 01:43 UTC 版)

ペンシクロビル
IUPAC命名法による物質名
臨床データ
販売名 Denavir
Drugs.com monograph
MedlinePlus a697027
胎児危険度分類
法的規制
投与方法 Topical
薬物動態データ
生物学的利用能1.5% (oral), negligible (topical)
血漿タンパク結合<20%
代謝Viral thymidine kinase
半減期2.2–2.3 hours
排泄Renal
識別
CAS番号
39809-25-1 
ATCコード D06BB06 (WHO) J05AB13 (WHO)
PubChem CID: 4725
DrugBank DB00299 
ChemSpider 4563 
UNII 359HUE8FJC 
KEGG D05407  
ChEBI CHEBI:7956 
ChEMBL CHEMBL1540 
化学的データ
化学式C10H15N5O3
分子量253.258 g/mol
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ペンシクロビル(Penciclovir)は抗ウイルス薬として用いられるグアノシン類縁物質である。様々なヘルペスウイルス感染症の治療に使用される。毒性が低く選択性の高いヌクレオシドアナログ英語版である。ペンシクロビルは経口投与では吸収性が悪く、海外では局所投与薬(軟膏等)として使用される。ファムシクロビルはペンシクロビルの生物学的利用能を向上させたプロドラッグである[1]

有効性

口唇ヘルペス(en:herpes labialis)に対しては、治癒までの期間、疼痛のある期間、ウイルスが検出されなくなるまでの期間を最短で1日に短縮する[2]。通常、治療しない場合の同期間は2週間程度である[3]

作用機序ならびに選択性

ペンシクロビルはそのままの形では不活性である。ウイルスに感染した細胞内にはウイルス性チミジンキナーゼが存在し、ペンシクロビルをリン酸化する。このリン酸化過程がペンシクロビルの有効化の律速段階である。ヒト細胞性キナーゼがペンシクロビルリン酸エステルをさらにリン酸化してペンシクロビル三リン酸が生成すると、ウイルスの遺伝子複製過程に混入し、DNAポリメラーゼを阻害してウイルスの複製を妨げる[4]:18[5][6][7]

ペンシクロビルの選択毒性は2つの要素から成る。1つ目は宿主の細胞性チミジンキナーゼによるリン酸化が非常に遅く、非感染細胞内でのペンシクロビルリン酸エステル濃度が感染細胞内の濃度に比べて充分に低い事である。2つ目はペンシクロビル三リン酸のウイルスDNAポリメラーゼへの親和性がヒトDNAポリメラーゼへの親和性に比べて充分に高い事である。これらの結果、ヒト健常細胞への細胞毒性は無視し得るほどに小さい。

ペンシクロビルの構造と作用機序はアシクロビル等の他の多くのヌクレオシドアナログと同様である。アシクロビルとペンシクロビルの違いは、三リン酸化体の作用時間の違いである。感染細胞内でのアシクロビル三リン酸の半減期が約1時間であるのに対して、ペンシクロビル三リン酸の半減期は約10〜20時間である[4]:20[5][6][7]。従ってペンシクロビルはアシクロビルよりも充分に大きな等価量を有していると言える。

禁忌

過去に本薬剤に対しアレルギーの既往歴がある者[8]

薬剤相互作用

プロベネシド:本薬剤の排出が抑制される[8]

副作用

精神神経障害、重篤な皮膚障害、急性腎不全、横紋筋溶解症、ショック、アナフィラキシー

関連項目

出典

  1. ^ 北村 正樹 (2008年6月26日). “ファムシクロビル:2成分目の経口抗ヘルペスウイルス薬”. 日経メディカル. 2016年4月24日閲覧。
  2. ^ Farmaceutiska Specialiteter i Sverige - the Swedish official drug catalog. [http://www.fass.se Fass.se --> Vectavir. Retrieved on August 12, 2009. Translated from "Tiden för läkning, smärta och påvisbart virus förkortas med upp till ett dygn."
  3. ^ こんな症状です|感染と症状|口唇ヘルペス|ヘルペス情報サイト”. GSK. 2016年4月24日閲覧。
  4. ^ a b ファムビル錠250mg インタビューフォーム”. マルホ (2015年9月). 2016年4月24日閲覧。
  5. ^ a b Earnshaw DL, Bacon TH, Darlison SJ, Edmonds K, Perkins RM, Vere Hodge RA (1992). “Mode of antiviral action of penciclovir in MRC-5 cells infected with herpes simplex virus type 1 (HSV-1), HSV-2, and varicella-zoster virus.”. Antimicrob Agents Chemother 36 (12): 2747-57. doi:10.1128/AAC.36.12.2747. PMC 245539. PMID 1336346. http://aac.asm.org/content/36/12/2747.abstract. 
  6. ^ a b T. H. Bacon, J. Gilbart, B. A. Howard, R. Standring-Cox (1996). “Inhibition of Varicella-Zoster Virus by Penciclovir in Cell Culture and Mechanism of Action”. Antivir Chem Chemother 7 (2): 71-8. doi:10.1177/095632029600700203. http://avc.sagepub.com/content/7/2/71.abstract. 
  7. ^ a b Hodge RA, Perkins RM (1989). “Mode of action of 9-(4-hydroxy-3-hydroxymethylbut-1-yl)guanine (BRL 39123) against herpes simplex virus in MRC-5 cells.”. Antimicrob Agents Chemother 33 (2): 223-9. doi:10.1128/AAC.33.2.223. PMC 171461. PMID 2541655. http://aac.asm.org/content/33/2/223.abstract. 
  8. ^ a b ファムシクロビル錠250mg「KN」 (PDF)




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