フラッシュ放流
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 16:23 UTC 版)
河川維持放流の内、下流域の河川形態をより自然な状態に保全する為に人工的な小規模洪水を起こし、水質の正常化や流砂の連続性確保を図る目的で行う放流を特にフラッシュ放流と呼ぶ。近年実施されつつある手法である。 河川生態系の維持は従来は安定した環境の維持がベターと考えられていたが、過度の安定化は河床の固定化や瀬・淵の消滅、浮遊藻類の増殖による水質悪化が起こる事が分かってきた。河川生態系は本来は洪水の存在によって定期的に正常化され、維持される。このため人工的に洪水を起こして固定化した河川環境をリセットし、河川の清浄化と生態系維持を図る事が検討されるようになった。 1996年にアメリカのコロラド川にあるグレンキャニオンダムで試験的に人工洪水試験が実施され、2000年~2002年に掛けてはスイスで国立公園公社と電力会社の共同事業として人工洪水試験が断続的に実施された。これによって瀬や淵の復活、浮遊藻類の除去や土砂の移動連続性がある程度確保できるなど一定の成果を得る事が出来た。日本では1997年(平成9年)より建設省(現・国土交通省)によって検討され、やがて国土交通省直轄ダムを中心に現在20ダムでフラッシュ放流が実施されている。主なダムとしては漁川ダム(漁川)・宮ヶ瀬ダム(中津川)・五十里ダム(男鹿川)・三国川ダム(三国川)・真名川ダム(真名川)・高山ダム及び比奈知ダム(名張川)・温井ダム(滝山川)などがある。 山形県にある寒河江ダム(寒河江川)の例を挙げると、朝10時に10トン/秒の放流を開始しその後徐々に水量を増加させ12時には水量を最大の30トン/秒を放流、次第に水量を減らして15時に終了するという手法である。終了間際には放流によって生じた濁水を正常化させるための後放流を実施し、一連の放流を終了する。この放流によって浮遊して悪臭を放っていた藻類を除去できた他、瀬や淵が保全されるなど河川環境の保護が確認された。現在は6月から11月までの間週1回実施している。 こうしたフラッシュ放流は漁業協同組合などの協力下で実施され、河川環境の改善に貢献している他、従来有効な手段が無かった堆砂対策の一手法として注目されている。関西電力が管理する旭ダム(旭川)ではこうした手法でダム堆砂の除去に取り組んでいる。だが開始されたばかりであり魚介類などへの影響といったエビデンスが蓄積されていない事から、今後の調査・検証が重要である。
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