ヒップホップとの関連
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/23 23:20 UTC 版)
グライムは、その誕生や発展の経緯からハウスミュージックの一派として解釈されるが、ブラックミュージックの潮流に属するヒップホップの派生ジャンルである、との誤解を受けることが少なくない。これはどちらもラップを音楽性の中核的要素としていることから、グライム成立の経緯に明るくない者が英米両国の音楽文化を比較する際、「グライム=イギリス流のヒップホップ」と解釈してしまうことが原因と思われる。実際には、イギリス国内においてはグライムだけでなく独自の歴史を持つヒップホップのシーンも確立されており、両者を同一視する解釈は完全な誤りである。リリックの構造においても、ヒップホップとグライムの間には少なからず相違点がみられる。 グライムのラップの典型的な特徴として、徹底的な表打ちに合わせたの頭韻、また早いビートを上回る前乗りによる独特の疾走感がある。加えて、(あえて)使い回された決まったフレーズを連呼して、観客との一体感や耳に残るキャッチーさを生み出す。ヒップホップとの差別化に試行錯誤してグライムが発展したとも言えるだろう。しかし、近年では曲によってヒップホップ調のラップをするものも少なくない。 グライムが独自のジャンルとして成立するにあたって、ヒップホップから多くの面において非常に強い影響を受けたことは事実と言える。例えばファッションに着目すると、ヒップホップMCとグライムMCの間には外見的な相違点がほぼみられない。これはグライムのシーンにおいても、ヒップホップ系ファッションの着用が1つの標準となっていることが理由である。非常に攻撃的で、反権力・反体制的なメンタリティを持つという点でも両者は共通しており、ヒップホップとのクロスオーバーはグライムシーンにおいて、常に重要なキーワードであり続けている。 特に2010年代以降、この両ジャンルの接近は著しくなっており、ヒップホップとグライムのMCが同一の楽曲で共演するケースもみられる (代表例として「Joe Grind feat. JME/Rap meets Grime」が挙げられる)。イギリス人アーティスト同士だけではなく、イギリスのグライムMCとアメリカのヒップホップMCがコラボレーションを行う例も増えている。カニエ・ウエストが2015年度のブリット・アワードにおいて新曲「All day」を披露した際、ステージ上においてロンドン出身のグライムMC25人を含むシーンの関係者らが一堂に会したパフォーマンスは、世界的に大きな話題となった。ヒップホップサイドにおいても、派生ジャンルの1つであるトラップの人気が拡大していることから、比較的近似したサウンドを持つグライムとの接近が容易になっていることも、こうした現象が起きる1つの要因と言えるであろう。
※この「ヒップホップとの関連」の解説は、「グライム」の解説の一部です。
「ヒップホップとの関連」を含む「グライム」の記事については、「グライム」の概要を参照ください。
- ヒップホップとの関連のページへのリンク