ニューヨーク・ワールドトレードセンター
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/03 05:08 UTC 版)
「ミノル・ヤマサキ」の記事における「ニューヨーク・ワールドトレードセンター」の解説
ニューヨーク・ワールドトレードセンタービル(WTCビル)は、ミノル・ヤマサキと彼が率いる建築設計事務所が設計を受託した(構造エンジニアを担当したのはレスリー・ロバートソン、エメリー・ロス・アンド・サンズ (Emery Roth and Sons)。建築デザインを、ミノル・ヤマサキ)。このWTCビルのツインタワーには、ヤマサキが発案したチューブ構造・鋼鉄構造が採用されている。チューブ構造とは、全体としてはちょうど鳥かごのような構造になっており、外壁部分に建物を支える縦の柱を無数に並べることによって、オフィス内に立ち並ぶ柱をなくすことができるという画期的な構造で、ビルの有効面積を大きくし、賃料収入をより多く得ることができる。WTCビルは、中心にエレベーター、階段、シャフト等で固めることによって、ちょうど中心に構造的に強い幹を配する形になっている。この中心の幹から四周に梁を延ばし、これに窓枠(建物を支える外壁の鉄柱のかご)を固定していた。ワールド・トレード・センター・コンプレックスは、7つのビルによって構成されるが、そのシンボルはツインタワー(1973年施工)であった。 2001年9月11日のテロ事件の際、2機の飛行機がWTCビル(ツインタワー)に突撃。この2機の飛行機の突撃とそれと共に起こった火災の高熱によって構造を支える外壁が溶解し、ツインタワーは相次いで倒壊することになる。この倒壊は、チューブ構造の構造的欠陥にあるとされる。具体的な倒壊のメカニズムは、ドミノ崩壊といわれている。これは、構造を支えていた外壁や柱が溶解することで、それより上部の部分が落下し、その重さによって次々に床が抜け倒壊に至ったとされる。 ヤマサキは、「ビルの寿命はせいぜい20年」と述べている。その理由として、「10年後の生活環境を明確につかむことができないのに、20年後は考えてみても見当もつかないからだ」と、述べている。その結果、現在最も機能的であると同時に、不適当になった場合に、短期間でいかに壊せるかを設計の考慮に入れていると述べている。テロ事件は、施工から27年経過していたわけであり、ヤマサキの考えによれば、WTCビルは(構造上の耐久性はともかくとして)、建築デザイン的には想定の寿命を過ぎていたことになる。あえて言えば、この撤去の容易さを考慮に入れて設計していたことが、意図せざる結果として倒壊を招いたとの批判が見られる。 その一方で、大きな衝撃を食らったにもかかわらず、崩壊までかなりの時間があった。航空機の衝突自体は、想定した設計だったという。構造設計をしたレスリー・ロバートソンは「設計当時、最大の航空機であったボーイング707型機が衝突し、衝突面の3分の2の柱が壊されても、持ちこたえる構造だった」と語っている。ただし、実際に衝突した航空機が想定以上に大型なボーイング767であり、衝突による火災の発生が想定を大幅に上回っていた可能性がある。 このテロによってツインタワーが倒壊したことは、設計を行った関係者に相当ショックだったようで、構造設計を担当した人物がある講演会で質問に答えた際、感情を抑えきれず号泣したと伝えられる。
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