ニュートンの第二法則
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/07/14 01:15 UTC 版)
ラグランジュ方程式の代わりに、ニュートンの第二法則を用いる方が利点が多いことが多い。ニュートン方程式を用いれば、振り子と台車の間の結節点における反力が得られる。すると、それぞれの物体について x 方向と y 方向のあわせて二つの方程式が得られる。台車の運動方程式は次のようになる。ただし、左辺は合力、右辺は加速度を表わす。 F − R x = M x ¨ {\displaystyle F-R_{x}=M{\ddot {x}}} F N − R y − M g = 0 {\displaystyle F_{N}-R_{y}-Mg=0} ここで、Rx および Ry は結節点における反力を表わす。FN は台車にかかる垂直抗力である。二つ目の方程式は鉛直方向の反力にしか依存しないので、垂直抗力を解くのに用いることができる。一つ目の方程式は水平方向の反力を解くのに用いることができる。この運動方程式系を完成させるには、振り子に固定された質点の加速度を計算する必要がある。慣性座標系における質点の位置は次のように表わすことができる。 r → P = ( x − ℓ sin θ ) x ^ I + ℓ cos θ y ^ I {\displaystyle {\vec {r}}_{P}=(x-\ell \sin \theta ){\hat {x}}_{I}+\ell \cos \theta {\hat {y}}_{I}} 二階微分をとることにより慣性系における加速度ベクトルを得る。 a → P / I = ( x ¨ + ℓ θ ˙ 2 sin θ − ℓ θ ¨ cos θ ) x ^ I + ( − ℓ θ ˙ 2 cos θ − ℓ θ ¨ sin θ ) y ^ I {\displaystyle {\vec {a}}_{P/I}=({\ddot {x}}+\ell {\dot {\theta }}^{2}\sin \theta -\ell {\ddot {\theta }}\cos \theta ){\hat {x}}_{I}+(-\ell {\dot {\theta }}^{2}\cos \theta -\ell {\ddot {\theta }}\sin \theta ){\hat {y}}_{I}} 第二運動法則を用いて、 x 方向と y 方向の二つの方程式を得る。質点にかかる反力は台車にかかる反力と逆符号になることに注意されたい。これはニュートンの第三法則から帰結する。 R x = m ( x ¨ + ℓ θ ˙ 2 sin θ − ℓ θ ¨ cos θ ) {\displaystyle R_{x}=m({\ddot {x}}+\ell {\dot {\theta }}^{2}\sin \theta -\ell {\ddot {\theta }}\cos \theta )} R y − m g = m ( − ℓ θ ˙ 2 cos θ − ℓ θ ¨ sin θ ) {\displaystyle R_{y}-mg=m(-\ell {\dot {\theta }}^{2}\cos \theta -\ell {\ddot {\theta }}\sin \theta )} 一つ目の方程式から、外力 F によらず水平方向の反力を計算する方法が得られる。 二つ目の方程式は鉛直方向の反力の計算に用いることができる。一つ目の運動方程式は F − R x = M x ¨ {\displaystyle F-R_{x}=M{\ddot {x}}} を R x = m ( x ¨ + ℓ θ ˙ 2 sin θ − ℓ θ ¨ cos θ ) {\displaystyle R_{x}=m({\ddot {x}}+\ell {\dot {\theta }}^{2}\sin \theta -\ell {\ddot {\theta }}\cos \theta )} に代入して次のように得られる。 ( M + m ) x ¨ − m ℓ θ ¨ cos θ + m ℓ θ ˙ 2 sin θ = F {\displaystyle \left(M+m\right){\ddot {x}}-m\ell {\ddot {\theta }}\cos \theta +m\ell {\dot {\theta }}^{2}\sin \theta =F} この方程式をよく見れば、ラグランジュ法による方程式と同じであることがわかる。二つ目の方程式を得るには、振り子の運動方程式と、常に振り子に直交する単位ベクトルとのドット積をとる必要がある。このベクトルは物体系の x 座標と呼ばれることが多い。慣性座標系ではこのベクトルは単純な二次元座標変換を用いて以下のように表わされる。 x ^ B = cos θ x ^ I + sin θ y ^ I {\displaystyle {\hat {x}}_{B}=\cos \theta {\hat {x}}_{I}+\sin \theta {\hat {y}}_{I}} ベクトル表記で書いた振り子の運動方程式は ∑ F → = m a → P / I {\displaystyle \sum {\vec {F}}=m{\vec {a}}_{P/I}} のようになる。この両辺と ^xB とのドット積を取ると、求める運動方程式の左辺は次のようになる(転置をとってかけるとドット積になることに注意)。 ( x ^ B ) T ∑ F → = ( x ^ B ) T ( R x x ^ I + R y y ^ I − m g y ^ I ) = ( x ^ B ) T ( R p y ^ B − m g y ^ I ) = − m g sin θ {\displaystyle ({\hat {x}}_{B})^{T}\sum {\vec {F}}=({\hat {x}}_{B})^{T}(R_{x}{\hat {x}}_{I}+R_{y}{\hat {y}}_{I}-mg{\hat {y}}_{I})=({\hat {x}}_{B})^{T}(R_{p}{\hat {y}}_{B}-mg{\hat {y}}_{I})=-mg\sin \theta } 上の式展開においては反力の物体系成分と慣性系成分との関係式が用いられている。質点と台車を繋ぐ棒が質量を持たないという仮定から、この棒は自身に垂直な負荷をまったく伝えないと考えられる。したがって、反力の物体系成分は単に Rp ^yB のように書け、棒に沿った成分しか存在しないことがいえる。このことから、棒の張力に関して次の方程式が得られる。 R p = R x 2 + R y 2 {\displaystyle R_{p}={\sqrt {R_{x}^{2}+R_{y}^{2}}}} 同様に、先に示した加速度 a→P/I の式と ^xB とのドット積を取ることで、求める運動方程式の右辺も計算することができる。その結果は(少々整理すると)以下のようになる。 m ( x ^ B ) T ( a → P / I ) = m ( x ¨ cos θ − ℓ θ ¨ ) {\displaystyle m({\hat {x}}_{B})^{T}({\vec {a}}_{P/I})=m({\ddot {x}}\cos \theta -\ell {\ddot {\theta }})} 左辺と右辺を繋いで m で割ると以下を得る。 ℓ θ ¨ − g sin θ = x ¨ cos θ {\displaystyle \ell {\ddot {\theta }}-g\sin \theta ={\ddot {x}}\cos \theta } これもまた、ラグランジュ法による方程式と同一である。ニュートン法を用いる利点は、全ての反力が明らかであり、損壊がないことを保証できる点にある。
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