ドイツにおける最初のマウス実験
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/14 23:12 UTC 版)
「ファビピラビル」の記事における「ドイツにおける最初のマウス実験」の解説
2002年頃から、ファビピラビルが広範囲のRNAウイルスに対して抗ウイルス効果を持つことが認識されており、インフルエンザウイルス以外のウイルスに対する効果についての研究が散発的に行われていた。 これらの結果を受け、ドイツのベルンハルト・ノホト熱帯医学研究所(ハンブルク)のシュテファン・ギュンター所長を中心とする研究グループは、ファビピラビルがエボラ出血熱ウイルスに対して、どの程度の効果を持つかを検証するため、2013年に同研究所のバイオセーフティーレベル4研究施設において、マウスを用いた動物実験を実施した。 用いたエボラウイルスは、アメリカ疾病予防管理センターから提供を受けた野生型ザイール株(ただし、オリジナルのZaire Mayinga 1976年株とは、わずかに2塩基対が異なっていた)である。また、用いたマウスはI型インターフェロンαおよびβ受容体を欠く2種類のノックアウトマウス、IFNAR-/- C57BL/6およびIFNAR-/- 129/Svであり、これらは野生型ザイール株に対する致死的な感受性を持つことが他の研究で判明していた。 IFNAR-/- C57BL/6ノックアウトマウスを用いた実験は、週齢をそろえた雌のマウスを次の3つの実験群に分けて行われた。各実験群当たりのマウスは5から10匹であった。感染はエアロゾルを鼻腔から吸入させる方法で行った。 実験群1:コントロールグループ(対照群)であり、ファビピラビルを投与しない 実験群2:感染後6日目から13日目までファビピラビルを投与(1日当たり、体重1kg当たり300mg) 実験群3:感染後8日目からファビピラビルを投与(1日当たり、体重1kg当たり300mg) 結果は次の通りであった。 実験群1:感染から10日以内に全個体死亡 実験群2:投与後4日(感染後10日)以内に血液中のウイルス消滅。感染後3週間まで全個体生存、回復 実験群3:実験群1より若干死期を遅らせたが、感染後14日目までに全個体死亡 IFNAR-/- 129/Svノックアウトマウスを用いた実験では、予想に反してファビピラビルを投与しない対照群の生存率が80%に達したため、ファビピラビルを投与した実験群と生存率にほとんど差が出ないという結果に終わった。これは、他の研究で報告されていたのはIFNAR-/- 129/SvはザイールE718 1976年株に対して致死性を持つということであり、今回用いたZaire Mayinga 1976年株との違いによるものであろうと考えられた。 総論として、ファビピラビルはマウス実験のレベルにおいては、明らかにエボラ出血熱に対する治療効果を持つが、投薬開始が感染後6日目と8日目では生死が100%分かれるというほど、生存率は投薬開始時期に強く依存することが判明した。
※この「ドイツにおける最初のマウス実験」の解説は、「ファビピラビル」の解説の一部です。
「ドイツにおける最初のマウス実験」を含む「ファビピラビル」の記事については、「ファビピラビル」の概要を参照ください。
- ドイツにおける最初のマウス実験のページへのリンク