トランジスタ補聴器
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1948年にベル研究所で開発されたトランジスタは補聴器の性能を大きく向上させた。トランジスタは真空管より小型化が可能で、消費電力も小さく、立ち上がりに時間を要せず、歪みや熱の発生も抑えられる。真空管は発熱がひどく寿命が短いという問題を抱えていたため、トランジスタは理想的な代替物だった。米国市場では電化製品一般の小型化はまだ特に需要がなく、トランジスタの登場を最初に歓迎したのは補聴器産業であった。補聴器用増幅器のマーケットをほぼ独占していたレイセオン社は、最初に発明された点接触型トランジスタが衝撃に弱く補聴器への応用に不向きであることを認識すると、他社に先駆けて接合型トランジスタの大量生産に着手した。しかし初期のゲルマニウム製接合型トランジスタには熱と湿気に弱い欠点があり、トランジスタ補聴器を身に付けて用いると数週間で使い物にならなくなった。トランジスタ補聴器の普及にはこの問題を解決する必要があった。 1952年に世に出たソノトーン1010型は、真空管式補聴器の一部にトランジスタを組み込んで電池の寿命を延ばしていた。翌年に発売されたゼニスのマイクロトーン・トランジマティックとマイコ社のトランジスト・イヤーは最初の完全なトランジスタ補聴器だった。1957年には耳にかけられる一体型補聴器として最初のモデル、オタリオン・リスナーが発売された。その見た目は眼鏡そのものだった。 テキサス・インスツルメンツ (TI) 社は1953年から補聴器産業にトランジスタを供給し始めた(これはトランジスタの品質が優れている証拠とみなされた)。1954年には従来より効率的なシリコン製トランジスタを開発してレイセオンの地盤を脅かすようになった。最初の市販トランジスタラジオを出したのも同年のことだった。TI社で1958年に集積回路(IC)が開発されると、やはり補聴器産業が応用の先陣を切った。その後20年のうちに、集積化されたトランジスタが信号増幅だけでなくデジタル信号処理の機能を担えることが理解されるようになった。 1960年から40年近く補聴器の開発に携わったエルマー・V・カールソンは、補聴器の発展史上重要なブレークスルーの多くに功績を遺した。
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