トラクション・エンジンとは? わかりやすく解説

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トラクションエンジン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/05 06:59 UTC 版)

バンダイミュージアムのベンデルプリンセス号
トラクションエンジンの一例(農業用トラクター)
トラクションエンジンの一例(運搬用自動車)
トラクションエンジンの一例(道路舗装用ローラー)
ポータブルエンジンはトラクションエンジンの先祖

トラクションエンジン(Traction Engine)とは、蒸気機関をもちいた農業用トラクター、運搬用自動車、道路舗装ローラーの総称。その他の蒸気自動車はスチームビークル(Steam Vehicle)と呼ばれる。

歴史

最初に蒸気機関を移動に用いたのはニコラ=ジョゼフ・キュニョーであった。これはキュニョーの砲車と呼ばれる大砲を牽引する目的で製作されたもので、1769年10月23日、パリで初めて公開された。

しかし、キュニョーの砲車は最高速度がわずか時速4kmと性能的にも貧弱なものであり、また前輪の前にボイラーを備えていたため舵取りがむずかしく、公開運転の際、運転を誤った操作員によりレンガ塀に衝突してしまった。これが世界初の自動車事故といわれている。

トラクションエンジンが今日よく知られる形態になったのは、19世紀中ごろのことだった。畜力に代わる産業用の機械動力として欧米では19世紀初頭から定置式蒸気機関が市販されていたが、それに減速機と車輪をつける形でイギリスのトーマス・アベリング(Thomas Aveling)が1859年に開発した蒸気トラクターがその原型である。

自走するだけでなくフライホイールから動力を取り出すこともでき、自走機能の無いポータブルエンジンも存在する。

自動車の黎明期、蒸気自動車電気自動車ガソリン自動車と覇を競ったが、やがて出力重量比の優れたガソリンエンジンの急速な発達によって表舞台から姿を消していった。 一方でガソリンやディーゼルといった内燃機関にない長所としてクラッチ変速機などの伝達機構が不要で直結で運用出来る点があった。内燃機関へ移行において比較的軽量である自動車分野においてはこの点はあまり問題にはならなかったものの、重量のある車両さらには重量物を牽引する用途は技術が未熟な時代の伝達機構では条件が厳しく耐久性信頼性に問題があった。これは鉄道における高出力な機関車分野でディーゼル機関車に適用できる流体継手やトルクコンバーター、電気式駆動の技術が発達するまで蒸気機関車が第一線で活躍した点と類似する。 さらに起動時に最大トルクを発揮する点で重量物を低速で牽引する用途、または類似の用途においては活路が残っていた。 これらの点からスピードを要しない用途、例えばロードローラー等などは第二次世界大戦後まで一部で使用されていた。ロードローラーでは用途上重量が重要となるため、出力重量比が劣り重量が嵩むという蒸気機関の短所も蒸気ローラーにおいては大きなデメリットにはならなかった点も大きい。

現在でもイギリスには動態保存された機体が多く存在し、毎年各地で行われるパレードでは往年の姿を見ることができる。

日本では現在、1902年ジョージ・ホワイト・アンド・サン社製トラクターが北海道空知郡上富良野町の農業博物館「土の館」に動態保存、1919年ギャレット社製の「ベンデルプリンセス号」が栃木県壬生町バンダイミュージアムに静態保存、1898年製のトラクターが東京ディズニーランドウエスタンランドにあるビッグサンダー・マウンテンのエントランス横に静態保存されているのみである。

トラクションエンジンが登場する作品

  • TV作品「きかんしゃトーマス(並びに原作の「汽車のえほん」)」 - トレバー(蒸気トラクター)やジョージ(蒸気ローラー)というトラクションエンジンのキャラクターが登場する他、TVオリジナルでもトラクションエンジンを鉄道用に改造したファーガスという小型の機関車(牽引車)などといったものが時々登場する[1]
  • トレマーズ4 - モンスターパニック映画「トレマーズ」シリーズ第4作(ただし本作はTVスペシャルドラマ)。舞台となる1899年のネバダの田舎町リジェクションには似つかわしくないともいえるメカで、貴重な労働力として輸送に動力源にと方々で活躍する。

脚注

関連項目

外部リンク


トラクション・エンジン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/15 21:12 UTC 版)

ブレッジャー・ワームズヒル軽便鉄道」の記事における「トラクション・エンジン」の解説

博物館収蔵する蒸気自動車は4台である。公開日運行するものと、検修あるいは全般検査済んだ車を入れ換えて運行展示する製造会社製造番号製造年車軸配置番号愛称特徴写真リチャード・ギャレット(英語版) 33305/1918 HT 7112The Mighty Atom 軍需省向けに開発した蒸気自動車で、第一次世界大戦中フランスで運行戦後、軍の放出品として売却され、ショーマン・トラクションエンジンに改造1964年より保存2002年に BWLR が購入動態保存一般公開日運行する。 リチャード・ギャレット 33442/1919 BL 9009 蒸気機関農耕トラクター (フィールドマーシャル)。1943年までハートフォードマノー (ファリンドン) で、その後1950年にフィトニーで使用、ブライズノートンの温室加熱機構格下げされたのち、1964年保存される愛称がないまま現役時代過ごし保存されてから「King of the Road」、「Caroline」と名称変更1988年購入動態保存一般開放日に展示。 ラストン・アンド・ホーンズビー(英語版) 115023/1922 XM 6373 ヘンリー・ウッドハムスは初め見た12トン複合蒸気ローラー1922年にキャットフォードで購入1950年まで路面修復工事用いられ1978年保存1988年購入運行可能で一般公開日使用。 チャールズ・バレル(英語版) 2551/1903 1903年にドイツ・マグデブルクに輸出した蒸気ローラー1921年から1957年までベルギー使用改修中。

※この「トラクション・エンジン」の解説は、「ブレッジャー・ワームズヒル軽便鉄道」の解説の一部です。
「トラクション・エンジン」を含む「ブレッジャー・ワームズヒル軽便鉄道」の記事については、「ブレッジャー・ワームズヒル軽便鉄道」の概要を参照ください。

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