テルケルとは? わかりやすく解説

テル・ケル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/06 05:37 UTC 版)

テル・ケル
Tel Quel
ジャンル 文学
刊行頻度 季刊
発売国 フランス
言語 フランス語
出版社 スイユ出版社
編集長 フィリップ・ソレルス
ISSN 0040-2419
刊行期間 1960年 - 1982年
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テル・ケル』(Tel Quel、「あるがまま」の意)は、1960年フィリップ・ソレルスフランスの若手作家によって創刊された季刊の前衛文学雑誌および叢書スイユ出版社から刊行。ヌーヴォー・ロマンの作家やその先駆とされるフランシス・ポンジュアントナン・アルトーの作品、次いで構造主義の文学論、さらにポスト構造主義の思想など新しい思想や実験的な作品を紹介し続けた。文化大革命に対する意見の不一致から内部対立が生じ、辞任した作家らは『シャンジュ』、『ポエティック』など別の雑誌・叢書を創刊。1982年に終刊となり、ソレルスを中心とする編集部は新たに『ランフィニフランス語版』誌を創刊し、ドノエル出版社フランス語版から刊行。現在はガリマール出版社から刊行されている。

概要

1960年創刊時の『テル・ケル』誌の編集委員はソレルス、ジャン=ルネ・ユグナンフランス語版ジャン=エデルン・アリエフランス語版であったが[1]、翌1961年に『公園』[2]によりメディシス賞を受賞したソレルスが、以後主導的な役割を担い[3]、1962年にソレルス、ジャン=ピエール・ファイユマルスラン・プレネフランス語版ジャクリーヌ・リセフランス語版ジャン・リカルドゥードゥニ・ロッシュフランス語版ジャン・チボードーフランス語版によって新しい編集委員会が結成され、まもなく、ジュリア・クリステヴァも参加した[1]

フランス語で「あるがまま」を意味する「テル・ケル(tel quel)」は、世界を「あるがままに」肯定するとしたニーチェの言葉(フランス語訳で « Je veux le monde et le veux TEL QUEL » )に由来する[1][4]

当初の思想的な立場は、サルトルボーヴォワールが1945年に創刊した左派の政治・哲学・文学雑誌『レ・タン・モデルヌ』と、文壇の大御所ジャン・ポーラン[5]が率いる『新フランス評論』の間に位置づけられる[1]フランス共産党の思想を支持していたが、中国の文化大革命をめぐって意見が対立。共産党を批判し、毛沢東主義を支持した[6][7]

この結果、ジャン=ピエール・ファイユは1967年に編集委員を辞任し、翌1968年に雑誌『シャンジュ(変化)』を創刊[8][9]ジャック・ルーボーらが参加した[10]。同じく「テル・ケル」を離れた批評家・文学理論家のジェラール・ジュネットは1970年にツヴェタン・トドロフとともに文学理論・研究雑誌『ポエティック』および叢書を創刊、フェミニズム批評家のエレーヌ・シクスーも編集に参加した[11][12][13]

上記以外の主な担い手はフランシス・ポンジュ、ロラン・バルトジャック・デリダミシェル・フーコージャック・ラカンらであったが[7][14][15]、バルトが1980年、ラカンが1981年と相次いで死去したことが一つの転機になったとソレルスは言う[15]。また、『テル・ケル』の終刊から『ランフィニ』の創刊への移行は、1981年に句読点のないモノローグの流れが300ページも続く実験的な小説『楽園(Paradis)』をスイユ社から発表したソレルスが[16]、2年後の1983年には比較的「古典的な」描写による心理的な小説『女たち』をガリマール社から発表したのと軌を一にしていた[15]

脚注

  1. ^ a b c d Jacques Jouet. “TEL QUEL, revue” (フランス語). Encyclopædia Universalis. 2020年4月25日閲覧。
  2. ^ フィリップ・ソレルス『公園』岩崎力訳、新潮社、1966年。
  3. ^ Fabrice Milosevic. “Éditions du Seuil” (フランス語). republique-des-lettres.fr. La République des Lettres. 2020年4月24日閲覧。
  4. ^ Antoine de Gaudemar (1995年4月6日). “Les numéros de Tel Quel” (フランス語). Libération.fr. 2020年4月22日閲覧。
  5. ^ ポーラン”. コトバンク. 2020年4月25日閲覧。
  6. ^ ジョゼフ・チルダーズ、ゲーリー・ヘンツィ編 編、杉野健太郎・丸山修・中村裕英訳 訳『コロンビア大学 現代文学・文化批評用語辞典』松柏社、1998年、398頁。 
  7. ^ a b テル・ケル”. コトバンク. 2020年4月22日閲覧。
  8. ^ Boris Gobille (2009年7月3日). “FAYE Jean-Pierre”. maitron.fr. Maitron. 2020年4月25日閲覧。
  9. ^ ジャン・ピエール ファイユ”. コトバンク. 2020年4月25日閲覧。
  10. ^ Change (1968-1983)” (フランス語). www.revues-litteraires.com. Revues littéraires. 2020年4月24日閲覧。
  11. ^ Collection littéraire : Revue Poétique” (フランス語). www.seuil.com. Éditions du Seuil. 2020年4月25日閲覧。
  12. ^ Collection littéraire : Poétique” (フランス語). www.seuil.com. Éditions du Seuil. 2020年4月25日閲覧。
  13. ^ ポエティック”. コトバンク. 2020年4月25日閲覧。
  14. ^ Hourmant, François (2015-07-17). Baudouin, Jean. ed (フランス語). Les revues et la dynamique des ruptures. Rennes: Presses universitaires de Rennes. pp. 85–103. ISBN 978-2-7535-3944-0. http://books.openedition.org/pur/12776 
  15. ^ a b c 小山尚之「前衛(アヴァンギャルド)の墓掘り人夫 ― フィリップ・ソレルスと前衛 ―」『東京海洋大学研究報告』第16巻、東京海洋大学、2020年2月28日、75-92頁。 
  16. ^ Paradis, Philippe Sollers, Littérature française” (フランス語). www.seuil.com. Éditions du Seuil. 2020年4月25日閲覧。

関連書籍

関連項目

外部リンク


テル・ケル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/14 15:14 UTC 版)

フィリップ・フォレスト」の記事における「テル・ケル」の解説

1985年提出した修士論文迷宮の神話 - ジェイムズ・ジョイスホルヘ・ルイス・ボルヘスアラン・ロブ=グリエ」は、このテーマをさらに発展させて1995年に『テクスト迷宮 - ジェイムズ・ジョイスフランツ・カフカ、エドウィン・ミュア(英語版)、ホルヘ・ルイス・ボルヘスミシェル・ビュトールアラン・ロブ=グリエ』として刊行した著書参照)。ここで扱ったジョイスアイルランド)、ボルヘスアルゼンチン)、ビュトールロブ=グリエらのヌーヴォー・ロマン、および博士論文扱ったソレルスフランス)については以後長年わたって研究続けることになるが、共通するテーマは「前衛」であり、フォレストとりわけソレルス作品前衛性だけでなく、1960年に彼が創刊し前衛文学雑誌叢書『テル・ケル』と同誌を中心とした文学運動関心深く、『テル・ケル』誌の後続誌として1983年創刊された『ランフィニ(フランス語版)』誌に直接寄稿するほか、『「テル・ケル」の歴史』(1995年)、『テル・ケルからランフィニへ』(2006年)などの随筆・評論発表している(著書参照)。

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