ダグラス A-3とは? わかりやすく解説

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A-3 (航空機)

(ダグラス A-3 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/25 23:25 UTC 版)

A3D / A-3 スカイウォーリアー

飛行するKA-3B 142664号機
(1967年撮影)

A-3 スカイウォーリアーDouglas A-3 Skywarrior )は、アメリカ合衆国ダグラス社が開発し、アメリカ海軍で運用された艦上攻撃機核攻撃を目的とした大型艦上攻撃機として開発され、のちには電子戦機空中給油機としても用いられた。

愛称の「スカイウォーリアー (Skywarrior)」は、空の戦士の意。1962年命名規則改定によって、A3DからA-3に改称された。

概要

第二次世界大戦終了後、アメリカ海軍は核爆弾を搭載できる大型艦上攻撃機を求めていた。1940年代後半の核爆弾は技術的限界から大型のものしか製造できなかったため、核兵器運搬手段は大型機に限られ、核攻撃能力を保持していたのは大型の戦略爆撃機を保有するアメリカ空軍のみであった。

海軍はそれに対抗し、1946年から大型艦上核攻撃機として、AJサヴェージの開発を開始させていたが、引き続き新型の大型艦上攻撃機の開発を行うこととなった。海軍ではこの他にも対潜哨戒機P-2Vを改造した艦上核爆撃型のP2V-3Cや、核兵器を搭載可能な飛行艇であるP6Mなど、多彩な核爆撃機を開発していた。

開発

1947年、アメリカ海軍は4社に「航空母艦より運用可能な、核爆弾の搭載を前提とした4.5tの爆弾搭載能力を持ち、3,700kmの戦闘行動半径を持つ艦上攻撃機」についての仕様要求を出した。これには、ノースアメリカン社のXA2J スーパーサヴェージダグラス社のXA3D スカイウォーリアーの二案が選定され、ダグラス社の案は1949年3月には正式な開発契約が締結され開発計画が開始された。

AJ改めA-2 サヴェージの拡大発展型でありターボプロップエンジン+補助ターボジェットエンジン混載型のノースアメリカン社案XA2Jが主にエンジンの不調から開発が難航したのに比べ、後退翼に2基のターボジェットエンジンを搭載したダグラス社案の試作機は1952年10月28日に初飛行し高い性能を示し、採用が決定しYA3D-1と命名された。

配備

先行量産型YA3D-1に引き続いて生産された本格量産型A3D-11956年から海軍第1重攻撃飛行隊(VAH-1)を皮切りに部隊配備が開始された。運用できる航空母艦はSCB-27C改装(蒸気カタパルト装備)とSCB-125A(アングルド・デッキ装備)を行い攻撃型空母に分類されたままのエセックス級[注 1]以降である。

1961年には、後継機のA3Jヴィジランティ(後のA-5)の就役により生産を終了し、また核攻撃任務からは外され、その後は大きな搭載能力を生かして電子戦機や写真偵察機、空中給油機に改装されている。

1962年にはアメリカ軍の名称整理により命名規則が変更されたため、A-3の呼称に変更されている。ちなみにこの命名規則の改正は、本機とA3Jの型番が紛らわしく、混乱を生じたのが理由のひとつであると言われる。

各種派生型に改造されたA-3は長期に渡って使用され、最終機の退役は1991年10月1日のことである。なお、アメリカ空軍においても改修型がB-66デストロイヤーとして用いられた。

機体

空母「レンジャー」に着艦するA3D-2(A-3B)1958年の撮影

A-3は艦上機であるが、全長23mにも達する、開発当時としては屈指の大型艦上機である。主翼は高翼配置の後退翼で、翼下のパイロンにターボジェットエンジンを片側一基ずつ搭載している。

武装は胴体内の爆弾倉に搭載する構造であり、中期生産型までは尾部に自衛用のリモコン式連装20mm機関砲を搭載していた。機銃は後の改装により電子妨害ポッドに置換されている。

また、胴体後部にはエアブレーキを装備している。

電子戦機型では、爆弾倉を与圧キャビンに改修しそこに操作員を収容したほか、アンテナが増備されている。

なお、射出座席は搭載されておらず、緊急時には前輪後部の腹部ハッチか、キャノピーからの自力の脱出が必要となる。

ベトナム戦争においては、機雷投下任務にも使用された。

諸元

A-3B(A3D-2) 三面図
A-3B (A3D-2)
  • 全長:23.27m
  • 全幅:22.10m
  • 全高:6.95m
  • エンジン:P&W J-57-P-10 ターボジェットエンジン(推力:4.7t)2基
  • 最大速度:982km/h=M0.80
  • 乗員:3名
  • 武装:爆弾など最大5.4t 20mm連装機関砲(初期のみ)

各型 

XA3D-1
試作機。ウェスティングハウスJ40エンジン装備[1]。2機製造。
YA-3A
旧呼称YA3D-1。先行量産型。P&W J57-P-6エンジン装備。XA3D-1よりの改修型も含め12機製造。
YRA-3A
旧呼称YA3D-1P。写真偵察型の試作機。YA-3Aから1機改修。
YEA-3A
旧呼称YA3D-1Q。電子戦(電波妨害)型の試作機。YA-3Aから1機改修。
EA-3A
旧呼称A3D-1Q。電子戦(電波妨害)型。YA-3Aから4機改修。
A-3A
旧呼称A3D-1。初期生産型。38機製造。
TA-3A
旧呼称A3D-1T。訓練機。
A-3B
旧呼称A3D-2。エンジンをJ57-P-10に換装。164機製造。
KA-3B
空中給油機型。A-3Bより83機が改修、EKA-3Bより11機が再改修。
NA-3B
各種試験用。A-3Bより2機改修。
EKA-3B
電子戦空中給油兼用型。A-3Bより8機、KA-3Bより34機(31機の資料もあり)が改修。
YRA-3B
旧呼称YA3D-2P。A-3Bの写真偵察型の試作機。
RA-3B
旧呼称A3D-2P。写真偵察型。29機生産。
ERA-3B
電子戦型。RA-3Bより8機改修
NRA-3B
各種試験用。RA-3Bより6機改修。
EA-3B
旧呼称A3D-2Q。電子戦ELINT)型。爆弾倉を与圧キャビンに改修し操作員を収容。25機製造。
VA-3B
VIP輸送用。爆弾倉に与圧式旅客キャビンを設置。EA-3Bより1機改修。
TA-3B
旧呼称A3D-2T。訓練機型。12機製造。
NTA-3B
TA-3Bを改修した各種試験用機。1機改修
UA-3B
TA-3Bを改修した汎用輸送機型。7機改修。
B-66 デストロイヤー
アメリカ空軍型。

現存する機体

  • 番号欄の番号は、上が機体番号(BuNo.)で下が製造番号である。
  • リストの他にも、デイヴィスモンサン空軍基地のAMARC(航空宇宙再生整備センター)に保存されている機体もある[2]
  • A-3の情報を扱う団体のサイトを出典とした。
型名   番号 機体写真     所在地 所有者 公開状況 状態 備考
XA3D-1 125413
7589
写真 アメリカ
ニューヨーク州
フルトン郡空港 公開 静態展示
A3D-1Q
YEA-3A
130361
9262
アメリカ
アリゾナ州
ピマ航空宇宙博物館[1] 公開 静態展示 [2]
A3D-1
NA-3A
135418
10311
アメリカ
フロリダ州
国立海軍航空博物館[3] 公開 静態展示 [4]
A3D-1
A-3A
135434
10327
写真 アメリカ
カリフォルニア州
空軍飛行試験博物館[5] 公開 静態展示 [6]
A3D-2
KA-3B
138944
10805
アメリカ
テキサス州
空母レキシントン博物館[7] 公開 静態展示 [8]
A3D-2
KA-3B
138965
10826
アメリカ
カリフォルニア州
ヤンクス航空博物館[9] 公開 保管中 [10]
A3D-2
A-3B
142246
11572
アメリカ
コネティカット州
ニューイングランド航空博物館[11] 公開 静態展示 [12]
A3D-2
EKA-3B
142251
11577
アメリカ
カリフォルニア州
空母ミッドウェイ博物館[13] 公開 静態展示 [14]
A3D-5
NA-3B
142630
11693
写真 アメリカ
アリゾナ州
デイヴィス・モンサン空軍基地
セレブリティ・ロウ保管所[注 2]
公開 静態展示
A3D-2P
NRA-3B
144825
12071
アメリカ
ワシントン州
A-3スカイウォーリアー・ウィビー記念財団[15]
(A-3 Skywarrior Whidbey Memorial Foundation)
公開 飛行可能[注 3] [16][17]
A3D-2P 144832
12078
アメリカ
ケンタッキー州
ケンタッキー航空博物館[18] 公開 修復中
A3D-2P
RA-3B
144840
12086
アメリカ
カリフォルニア州
エストレラ・ウォーバード博物館[19] 公開 静態展示 機首のみ現存している。[20]
A3D-2P
ERA-3B
144843
12089
アメリカ
カリフォルニア州
キャッスル航空博物館[21] 公開 静態展示 [22]
A3D-2T
EA-3B
NEA-3B
144865
12111
写真 アメリカ
フロリダ州
国立海軍航空博物館 公開 静態展示[注 4] [23]
A3D-2T
NTA-3B
144867
12113
アメリカ
ハワイ州
真珠湾太平洋航空博物館[24] 公開 静態展示[注 5] [25][26]
A3D-2Q
EA-3B
146448
12400
アメリカ
メリーランド州
アメリカ国立暗号博物館[注 6] 不明 静態展示
A3D-2Q
EA-3B
146453
12405
アメリカ
テキサス州
ヴィンテージ飛行博物館[27] 公開 修復中 [28]
A3D-2Q
EA-3B
146457
12409
アメリカ
サウスカロライナ州
ペイトリオッツ・ポイント海軍海事博物館[29] 公開 静態展示 [30][31]
A3D-2
KA-3B
147648
12412
アメリカ
フロリダ州
キーウェスト海軍航空基地 公開 静態展示
A3D-2
KA-3B
147657
12421
写真 アメリカ
オレゴン州
エア・ズー航空歴史博物館[32] 公開 修復中
A3D-2
KA-3B
147666
12430
アメリカ
カリフォルニア州
オークランド航空博物館[33] 公開 静態展示 [34]

脚注

注釈

  1. ^ エセックス級は1952年に攻撃型空母に分類されたのち、SCB-27A改かSCB-27C改修を経てSCB-125改修が施されたが、油圧カタパルト装備のSCB-27A改修艦は1960年に対潜空母に分類され核攻撃機は搭載していない。
  2. ^ 隣接するピマ航空宇宙博物館のツアーにより入場可能。
  3. ^ 飛行は行われないが可能ではあり、2011年4月29日にはウィビー島へと飛行した。
  4. ^ 飛行は行われないが可能ではあり、2011年6月30日にはフロリダ州ペンサコーラからテキサス州ミーチャムへと飛行した。
  5. ^ 飛行は行われないが可能ではあり、2011年6月28日にはノースアイランド海軍航空基地へと飛行した。
  6. ^ かつては国立警戒公園に置かれていたが、2017年に公園が閉鎖されたあとは暗号博物館で保管されており、博物館の隣で新たに公園が作られる予定。

出典

参考文献

  • 『科学朝日別冊「世界の翼」1955年版』朝日出版社、1954年12月1日。 
  • 『世界の傑作機 No.118 A-3 スカイウォーリア』(ISBN 978-4893191434)文林堂、2006

関連項目



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