ジョリヴェ「オンド・マルトノ協奏曲」
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「オンド・マルトノ」の記事における「ジョリヴェ「オンド・マルトノ協奏曲」」の解説
アンドレ・ジョリヴェの「オンド・マルトノ協奏曲」は、メシアンのトゥランガリーラ交響曲と並んでこの楽器の初期である1940年代にオンド・マルトノの可能性を探求した曲として重要である。しかしトゥランガリーラ交響曲に比べ、演奏頻度は低い。 この曲ではオンド・マルトノは精霊を表すものと作曲者によって定義されており、実質の存在であるその他の楽器によるオーケストラと対極をなす存在である。つまり、この曲においてオンド・マルトノは、従来のあらゆる楽器を超える存在であることを念頭に書かれている。その考えは詩的なアイデアだけにとどまらず、楽譜のあらゆる場所で読み取れる。 例えば冒頭のオンド・マルトノのソロは、低音域のF2から始まってC7に至るまでの長くゆっくりのメロディを、一息でしかも全オクターヴにおいて均等な音質で演奏している。このような楽器はそれまで弦楽器も管楽器も存在せず、ピアノも減衰音である以上アーティキュレーションは異なる。オルガンが唯一の例外だが、オンド・マルトノはそれよりずっと繊細なアーティキュレーションやヴィブラートを伴って演奏できる。第1楽章のカデンツァでは、単音しか発し得ないオンド・マルトノに、トレモロによる擬似和音の効果を求めている。しかもその和音は複数の声部に分けてポリフォニックに書かれており、バッハ以来一つの楽器でポリフォニーを求める伝統の、音楽的な表現の豊かさも忘れていない。(この冒頭とカデンツァの二つの譜例は、伊福部昭の著書「管絃楽法」にも記載されている。)第1楽章終盤には、オンド・マルトノがリボン奏法でオクターヴを昇るのに合わせてハープのグリッサンドも重ねられており、管弦楽法としてとても効果的に響く。 第2楽章では変拍子スケルツォに乗せて、楽器の様々な可能性が試みられる。音色の極端な変化、鍵盤奏法とリボン奏法の瞬間的な交替、超高速グリッサンド、スタッカートなどアーティキュレーションの変化と、それらの各音色にあわせてシロフォンやピッコロ、あるいはサクソフォンとの交替によるオーケストレーションの可能性が試されている。クライマックスでは6オクターヴもの異国的な音階を鍵盤上で駆け上がるが、これはジョリヴェの前作である「リノスの歌」のフルートによる5オクターヴの上昇を踏襲している。第3楽章ではリボン奏法とパルム・スピーカーの効果を中心とした、緩徐楽章でのカンタービレであり、第1・第2楽章のヴィルトゥオージティに対して、オンド・マルトノの音色そのものを聴き込む曲となっている(この急・急・緩という楽章構成〔つまり、緩徐楽章が最後に来る〕は、協奏曲としては異例である)。
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