サーチ効果
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「ヤング・ブリティッシュ・アーティスト」の記事における「サーチ効果」の解説
こうしたグループ展の若い作家たちに関心を持ったアートコレクターのチャールズ・サーチは『フリーズ』展や『ギャンブラー』展に訪れ、彼らの作品のコレクションを開始した。フリードマンは、自分の企画した『ギャンブラー』にサーチが緑色のロールスロイスで乗り付け、ハーストの動物を使った最初のインスタレーション、『サウザンド・イヤーズ』(大きなガラスケースの中に牛の頭が置かれ、腐敗して無数のハエやウジが群がっていた)の前で驚きのあまり口を開けたまま立っていた、と語っている。 1990年代に入り、経済の低迷や不動産不況で現代美術市場が値崩れし、多くのギャラリーが立ち行かなくなる冬の時代が訪れた。サーチはそれまではアンディー・ウォーホル、リチャード・セラ、アンゼルム・キーファー、ジグマー・ポルケ、ゲルハルト・リヒターなど既に名声を確立したアメリカやドイツの美術家の高額な作品ばかりを収集し自ら経営するサーチ・ギャラリーで展示していたが、この時期からイギリスの若く無名の美術家にコレクションを転換する。彼が以前持っていた米独の作家たちのコレクションを市場に放出したことは、これらの作家の相場が一時期下がるほどの影響を市場に与えたこともあり当時大きな話題になった。 サーチはロンドン北部のセント・ジョンズ・ウッドに大きな工場跡の建物を買って改装し、サーチ・ギャラリーを移転した。1992年からは展覧会シリーズ、『ヤング・ブリティッシュ・アーティスト』を行い、話題となった。この展覧会の名称から、同時期の若い美術家たちが「ヤング・ブリティッシュ・アーティスト」と呼ばれるようになる。サーチ・コレクションに作品が買い上げられたことにより、YBAsのアーティストたちは金銭的に潤ったばかりでなく、メディアの注目も集めることになった。サーチはすでに有名人であったが、その彼が高額の金を投じて反抗的な若者達の不快な作品群を買ったことは論争や嘲笑のタネとなり、高級紙や大衆紙にも大きく取り上げられた。1990年代前半からイギリスの権威ある美術賞、ターナー賞などもこれらの作家が席巻し、チャンネル4の授賞式典中継でこれらの作家たちはイギリスの茶の間にも知られる顔となった。 YBAsの効果は、沈滞していたイギリスの美術界に刺激を与え、セイディー・コールズ・HQ、ヴィクトリア・ミロ、ホワイトキューブ、インターリムアート、アントニー・ウィルキンソン・ギャラリーなど、新しい世代が経営する多くの現代美術ギャラリーや美術商が登場することに繋がった。美術雑誌もこうした作家の特集や新進ギャラリーからの広告費で潤い、イギリス美術界やメディアがYBAsに続く美術家発掘に熱中し、ハーストらはイギリスだけでなくヨーロッパやアメリカでも名声を確立した。 YBAsのアーティストたちはショッキングな作品を多く展示し、ダミアン・ハーストの鮫や動物のホルマリン漬けや、トレイシー・エミンのコンドームやタバコが散らかったベッドを用いた作品が代表的である。こうした作品はしばしばメディアで攻撃されたが、かえって有名となっていった。
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