サウス・ダコタ級戦艦 (1939)とは? わかりやすく解説

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サウスダコタ級戦艦 (1939)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/13 01:30 UTC 版)

サウスダコタ級戦艦
USS サウスダコタ (BB-57)
基本情報
艦種 戦艦
命名基準 アメリカの州名
建造所
運用者 アメリカ海軍
就役期間 1942年 - 1947年
同型艦 4隻
前級 ノースカロライナ級戦艦
次級 アイオワ級戦艦
要目 (1942年 - 1945年[1][2]
排水量 35,000トン
軽荷排水量 34,563トン
基準排水量 38,664トン
満載排水量
  • 44,519トン
  • 46,200トン(1945年)
全長 680フィート4.25インチ (207.3720 m)
水線長 666フィート (203 m)
最大幅 108フィート1.5インチ (32.957 m)
吃水 満載: 34フィート11.25インチ (10.6490 m)
機関方式 蒸気タービン ×4基
推進器 スクリュープロペラ×4軸
出力 130,000馬力 (97,000 kW)
速力
  • 27.5ノット (50.9 km/h)
  • 27ノット (50 km/h)(1945年)
航続距離
  • 15ノット/17,000海里 (31,000 km) (1945年)
  • 25ノット/6,400海里 (11,900 km) (1945年)
乗員 2,257名、2354名 (BB-58 - 60)
兵装
装甲
舷側
310 mm (傾斜19度)
甲板
主甲板STS38 mm
装甲甲板
127 mm + STS19 mm
砲防盾
457 mm
主砲座
439 mm
司令塔
406 mm
搭載機
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サウスダコタ級戦艦(サウスダコタきゅうせんかん、South-Dakota class Battleship)は、アメリカ海軍第二次世界大戦で運用した戦艦の艦級。35,000トン級の船体に[3]、主砲として16インチ砲9門(三連砲塔三基)を搭載[注釈 1]、27ノット程度を発揮可能な超弩級戦艦である[5]ヴィンソン案により1938年より建造が始まったが[注釈 2]日本海軍が建造中の新世代戦艦に対し、前級2隻と本級4隻では不利と判断したアメリカ合衆国[6]アイオワ級戦艦(45,000トン級)とモンタナ級戦艦(50,000トン級)の建造(計画)に移行した[7]

概要

元々は1938年度の予算でノースカロライナ級戦艦2隻を追加割り当てしようとしたが、海軍は新しい設計の戦艦を求め、1937年3月に設計が始められた。先に計画されたノースカロライナ級では実現できなかった対16インチ砲防御を施し、上部構造物のコンパクト化により全長は15 mも短くなっている。

1938年4月1日、列強各国(アメリカ、イギリス、フランス)は日本海軍の建艦動向を理由に[8]第2次ロンドン海軍条約のエスカレーター条項適用を通告した[9][10]。アメリカ海軍は18インチ砲搭載45,000トン戦艦を主張したが、イギリスは16インチ砲42,000トン級戦艦を主張する[11][注釈 3]。 アメリカは18インチ砲搭載案を諦め[13]、6月30日に主力艦の最大限度を「排水量45,000トン、主砲口径16インチ」とする条件で調印した[14][13]。ただしアメリカ海軍が1938年度で建造予定の主力艦は、予定どおり16インチ砲搭載の35,000トン級戦艦4隻とされた[注釈 4]。 これがサウスダコタ級戦艦で、BB-60のみノーフォーク海軍工廠で建造、他3隻は民間造船所での建造となる[注釈 2]ワシントン海軍軍縮条約の規定により艦齢超過戦艦3隻(ネバダペンシルベニアニューヨーク)の代艦として、52ヶ月での完成を予定して本級3隻(インディアナ、マサチューセッツ、サウスダコタ)の入札を開始した[注釈 5]。1938年中に3隻と1939年に1隻が発注され、1939年に3隻と1940年に1隻が起工した。

一方で1938年には早くも45,000トン級戦艦2隻について具体的な報道がはじまり[17]、アイオワ級戦艦として建造が進む中で、35,000トン級(サウスダコタ級)戦艦のネームシップは1941年6月上旬に進水[注釈 6]、ノースカロライナ級戦艦2隻と共に就役を急いだ[19]。 1942年に4隻全艦が就役した。

第二次世界大戦中盤、高速戦艦が最も必要とされる時期に全艦が就役し、1943年より就役をはじめたエセックス級航空母艦インディペンデンス級航空母艦と共に、アメリカ海軍の主戦力となった[注釈 7]。 本級は、太平洋戦線(対日戦)と大西洋攻戦線(対ドイツ戦)の両大洋で活躍する。最終的には全艦が太平洋に投入され、ノースカロライナ級と共に空母機動部隊の護衛任務や、ガダルカナル島を巡る攻防戦での水上戦闘など、対日反攻の初期から活躍した。

前級ノースカロライナ級で弱点とされた防御力の改善をはかるべく、船体を前後方向で短縮して被弾面積の減少を図り、またバイタルパートを集約した集中防御方式が採用された。しかし、設計時には第二次ロンドン海軍軍縮条約の基準排水量35,000トンで米議会が排水量制限され、パナマ運河通航のための全幅33 mという制限により、耐弾性能は満足のいくものにならなかったという。なおノックス海軍長官はノースカロライナ級戦艦の時点で、ドイツ海軍ビスマルク級戦艦より火力・装甲とも優っていると発表した[注釈 6]

集中防御の徹底と全長を切り詰めた設計は、大和型戦艦と共通するものであり、日米両国の技術者がその類似性に驚いたという逸話がある。

全長が重巡洋艦並みの短さになったことで速力の低下が懸念されたが、機関の増強によりカタログスペック上はどうにか27ノットが確保された。

本級は、純粋に艦隊決戦用に設計された最後のアメリカ戦艦である。攻防全てにおいて高い次元でバランスがとれた、条約型戦艦の傑作と評価されている。ただし1940年4月の時点でアメリカ海軍上層部は、日本海軍の新型超弩級戦艦(排水量45,000トン、16インチ砲9~10門、速力30ノット以上)8隻に対抗するため、50,000~52,000トン級戦艦を建造すると合衆国上院の海軍委員会で発言している[注釈 8]。 このようにアメリカ海軍は16インチ砲搭載35,000トン級戦艦を合計6隻で打ち切り、日本海軍の新型戦艦に対抗するためアイオワ級戦艦の建造とモンタナ級戦艦の計画を進めた[注釈 9]。 太平洋戦争開戦前から大和型戦艦を巡る情報は「20インチ砲を搭載した45,000トン級戦艦である」「むしろ35,000トン級戦艦にすぎない」「日独伊三国同盟によりドイツの技術を提供されビスマルク級戦艦と類似している」などと錯綜し[21]、日米開戦後もその状況は変わらなかった[22][23]

船体

本級の特徴であり、前のノースカロライナ級との大きな相違点である船体構造は、軽量化の賜物である。艦橋構造自体は前級と同様であるが、煙突が小型化され艦橋直後に設置された結果、非常にコンパクトなスタイルとなった。基準排水量35,000 tでコロラド級戦艦のMk.5 16インチ45口径砲(AP Mark 5、砲口初速768 m/s、重量1,016 kg)の対16インチ砲用の防御(ヤード・ポンド法:17,700 - 30,900 yd、メートル法:16.2 - 28.3 km)を達成した。

しかしながら、船殻重量を減少しその分を装甲の強化に当てるために15 m短縮された船体は、結果的に高速力を発揮しにくくした船体でもあった。特に、艦首部の浮力が著しく低下し、盛大な艦首波を作ることもしばしばであった。大戦末期に神風対策で艦首部に40 mm 4連装機関砲が搭載されると、ただでさえ低かった凌波性は恐ろしいまでに低下し、荒天時には操艦に相当な支障が出るほどであった。また、船体圧縮と装甲強化の結果、居住性は著しく低下した。平時でも低い居住性だったものが、搭載物がいろいろと居住区画に(倉庫代用として)積まれた戦時ではさらに低下した。上級士官用の部屋までもスケールダウンを余儀なくされた。

なお、1番艦サウスダコタには艦隊旗艦設備を、他の3艦には戦隊旗艦設備を設けている。また、艦全体のデザインは真珠湾攻撃後のテネシー級戦艦テネシーカリフォルニア両艦とコロラド級戦艦ウェストバージニアにも採り入れられた。

兵装

主砲はノースカロライナ級戦艦に引き続いて16インチ・マーク6型砲が搭載され、高角砲も引き続き5インチ38口径連装砲が搭載された。ただし、サウスダコタのみは艦隊旗艦設備を設けた関係で兵装の一部を搭載できなくなった。中心となる砲熕兵装に関しては、ノースカロライナ級戦艦とまったく同一といってもよい。相違点としては、主砲防御について天蓋の装甲が強化された代わりに、側盾装甲は若干弱められた。

対空兵装は、当初は28 mm 4連装機銃と12.7 mm単装機銃のペアが想定されていたが、竣工時は40 mm 4連装機関砲が追加搭載された。大戦中は随時対空兵装の更新に努めたが、各艦により微妙な差異がある。例えば、マサチューセッツは大戦中、訓令どおりに40 mm 4連装機関砲を18基計72門を搭載したが、他はそれより少なかった。

また、20 mm機銃の搭載数も艦によって異なるが、40 mm 4連装機関砲搭載と引き換えに搭載数を若干減らしているのは共通である。いずれの艦も艦首部に40 mm 4連装機関砲を搭載したが、その代償は「船体」の項目で述べたとおりである。

防御

ノースカロライナ級ともっとも異なる点として、垂直防御が挙げられる。前級はあくまで14インチ砲に対応した防御しか施されていなかったが、サウスダコタ級では初めから対16インチ砲用の防御方式がとられた。主水線防御を前級の外装式から内装式に改め、縦隔壁上に垂直防御が施された。縦隔壁のうち、装甲のある部分とない部分ははっきりと段差がついている。というのも、船殻重量の軽量化の観点からこの段差を埋めなかったからである。このため、日の当たり方によっては客船のプロムナードデッキのように明確な段差を確認することができる。外板はSTSプレート32 mm、内装装甲は上部と下部に分けられ、上部は310 mm厚、下部も上の部分は310 mm厚で一部は152 mm、下の部分は最も薄い部分で25 mm、19度傾斜して張り、装甲の裏面にはSTSプレート22 mmが結合されていた。水平防御はノースカロライナ級と似通っており、中央部分の装甲が4層に分けられている点が異なる。装甲厚は上より38 mm(主甲板)、127 mm + 19 mm(装甲甲板。舷側部は135 mm + 19 mm)、16 mm(弾片防御甲板)、8 mm(中甲板)となっている。対応防御はコロラド級戦艦のMk.5 16インチ45口径砲(AP Mark 5、砲口初速768 m/s、重量1,016 kg)では17,700 - 30,900 yd(16.2 - 28.3 km)、本艦のMk.6 16インチ45口径砲(AP Mark 8、砲口初速701 m/s、重量1,225 kg)では20,500 - 26,400 yd(18.7 - 24.1 km)である。

水中防御はノースカロライナ級と同様、TNT 318 kgの魚雷弾頭に対抗できる設計となっている。ただし、バルジは垂直防御同様内装式に改められた。三重底であるという点も前級と同様である。しかし、1939年に衝撃吸収能力は前級より劣っていたという試験結果が出た。液層区画を改正されたものの、なお不十分とされ、結局は完全解決されることはなかった。

機関

ノースカロライナ級と同様だが、船体が寸胴になった関係で機関出力は前級より1万馬力引き上げられた。もっとも、排水量の関係上、機関そのものより汽缶や主機をパワーアップさせて相対的に機関出力を向上させた。試運転では27.8ノットまで可能だったが、対空兵装などの装備増設で排水量が増加し、1945年には27ノットで低下した。姉妹艦のアラバマは42,740トンのときに133,070馬力で27.08ノット、44,840トンのときに135,420馬力で26.7ノットを発揮したという。

同型艦

艦番号 艦名 発注 起工 進水 就役 退役
BB-57 サウスダコタ
USS South Dakota
1938年
12月15日
1939年
7月5日
1941年
6月7日
1942年
3月20日
1947年
1月31日
BB-58 インディアナ
USS Indiana
1939年
11月20日
1941年
11月21日
1942年
4月30日
1947年
9月11日
BB-59 マサチューセッツ
USS Massachusetts
1939年
7月20日
1941年
9月23日
1942年
5月12日
1947年
3月27日
BB-60 アラバマ
USS Alabama
1939年
4月1日
1940年
2月1日
1942年
2月16日
1942年
8月16日
1947年
1月9日

登場作品

映画

沈黙の戦艦
記念艦となっているアラバマが、物語の舞台となるアイオワ級戦艦ミズーリの艦上シーンの撮影に使用されている。そのため、アラバマの艦上はミズーリ風に改装されており、トマホーク装甲ボックスランチャーファランクスCIWSなどのセットが各所に設置されている。

ゲーム

『naval creed warships』
プレミアム艦艇として、マサチューセッツが登場しており課金では無い為、購入可能。
艦隊これくしょん
艦船擬人化されたサウスダコタ、マサチューセッツが登場する。
アズールレーン
艦船擬人化されたサウスダコタ、マサチューセッツ、アラバマが登場する。
戦艦少女R
艦船擬人化されたサウスダコタ、インディアナ、マサチューセッツが登場する。

脚注

注釈

  1. ^ 【ニューヨーク三十一日同盟】[4] 建造中のアメリカ主力艦サウス・ダコタ號は豫定より四ヶ月早く來る六月七日進水することになつた、同艦は排水量三萬五千トン全長七百五十フィート、十六インチ砲九門、五インチ砲二十門、小口徑砲十六門を備へ、速力三十ノツトである(記事おわり)
  2. ^ a b (ワシントン發)[15] 米國海軍省は第一次及び第二次ビンソン建艦案に基き年内に主力艦四隻の建造に着手することとなり十五日ノーフォーク海軍工廠で建造豫定の第六十號を除く第五十七、五十八、五十九の三主力艦の建造を民間造船會社の請負入札に附した、而して軍事通と知られる、ニューヨーク・タイムス紙ワシントン特派員ボールドウヰン氏は右主力艦の性能に就き十五日同紙上で左の如く報じてゐる 本年度起工の新主力艦四隻の設計は目下建造中のワシントン号、ノースカロライナ號と全然同型で速力二十七・五ノット、十六インチ砲三連装九門となる豫定である、然し船體及び機關は以上の兩艦と可成り相異する見込みなので設計し直す必要があらう、一方四萬五千トン級主力艦の設計に就いても目下研究が進められて居り、一ヶ年内に設計が完了する見込みだ砲力よりもむしろ速力に重點を置き現在建造中のノースカロライナ級より平均時速を五ノット程度引上げ時速三十二ノット乃至三十三ノットの快速とし主砲十六インチ三連装九門となる見込みである(記事おわり)
  3. ^ イギリスではキング・ジョージ5世級戦艦に引き続き、16インチ砲装備のライオン級戦艦が計画された[12]
  4. ^ 米國本年度の建艦 主力艦四隻 何れも三萬五千噸[13](華府三十日同盟)主力艦噸數最大限を四萬五千噸とする英米佛三國新海軍協定の調印は既に幾度か報道されたことを確認したに止まり米國では別に大きなセンセーションを起してゐない 米國海軍は過日リー作戰部長が言明した通り目下の所新三萬五千噸を超過する主力艦を建造する意圖はなく、年内に起工する主力艦四隻は何れも三萬五千噸となる豫定だが一九三九=四〇年後の豫算には新に四萬三千噸乃至四萬五千噸級の大主力艦二隻の建造を要求することは殆ど確實とされてゐる。なほ英米佛三國が條約所定の三萬五千噸制限を破棄しながら特に四萬五千噸の新制限を設けたのは事實上軍備制限を棄てながら表面的に軍備制限協定の體制を保たんとする意圖外にはないと見られている(記事おわり)
  5. ^ 〔 ワシントン三日UP 〕[16] 海軍省では軍擴案に從ひ、新大主力艦三隻建造の入札を開始した、本主力艦は各艦三万五千噸で、五十二ヶ月以内に竣工せしめなければならない契約である、本艦は各インディアナ、マサチュセッツ、サウスダコタと命名され、建造費一艦につき、五千五百万弗の見積りである、是ら等の艦は近々限定艦齢に達するネバダ、ペンシルヴァニア、ニューヨーク三艦に交代されるもので、專門家の意見に依れば該三艦は主力艦ワシントン號と同型であるが、現代科學の粹を集中し、煙突なぞ現存軍艦中に見られない程低いものとなり、防空設備魚形水雷攻撃等に特別の防備あり、時速廿五節、千五百名の乗組員を有する強力艦である(記事おわり)
  6. ^ a b (五日ワシントン發合同)[18] 三萬五千トンの新主力艦南ダコタ号は豫定よりも早く來る七日進水するが、ノツクス海軍長官は右に關し次の如く發表した 南ダコタ号は明年一月就役するが平時よりも進水、就役において三ヶ月も早くなつてゐる、過般就役した北カロライナワシントン兩艦は先に撃沈された獨のビスマルク號よりも遙かに優秀なものであり、装甲もよし、砲も大きい(記事おわり)
  7. ^ 米の強みと弱點[20](中略)一、米國は航空母艦勢力に対して致命的打撃を蒙つたが、既に米國はエセツクスインデペンデンスプリンストンレキシントンの四隻の航空母艦の進水を発表し、さらに十三隻の航空母艦が目下建造中であると発表してゐる、米軍事専門家は戰爭第二年目において恐らく日本が一月一隻平均の最新航空母艦の出現に當面するであらうと豪語してゐる
    二、米の主力艦は眞珠灣で撃沈されたものが、まだ代艦されない現状であるが、米國は新主力艦ノースカロライナとワシントンが既に活躍してゐるのに加ふるに速力廿七節、備砲十六吋、三万五千トンのサウスダコタ級の四隻も既に就役したか、若しくは今年中に就役するとなし、米海軍主力艦勢力の強大を誇つてゐる、しかし軍事専門家はこれら主力艦に附随すべき航空母艦、巡洋艦、駆逐艦の不足は実際の戰闘において主力艦の戰闘力を著しく低下せしめざるを得ない点を自認してゐる(以下略)
  8. ^ (華府十八日同盟)[6] 米國上院は十八日總額九億六千三百七十九万七千弗に上る一九四〇年度海軍通常豫算を可決したが、右豫算通過に先立ちスターク海軍作戰部長は上院海軍委員會に於て次の如く語つた 日本は四万三千噸の超弩級戰艦八隻を建造中で、或は既に建造したものと信ぜられるので、米國海軍は近く五万噸乃至五万二千噸の主力艦建造に着手する計畫である(記事おわり)
  9. ^ (中略)[7] スターク軍令部總長は『陸海軍ジャーナル』の海軍記念日號に『米海軍の兩洋課題』なる題で軍擴の實状を述べ『本年十月までに三万五千噸級新鋭戰艦北カロライナ、ワシントンの二隻を竣工第一線に就役せしめた外に同型南ダコタ、マサチューセツツも進水し装備を急ぎつゝあり更に十一月には姉妹艦インデイアナ號が進水、今次大戰の經驗によつて徹底的新工夫をこらされた新鋭主力群の第六番アラバマ號も豫定より早く明早春進水することになつてゐたのを繰上げて本年末には進水する。而も米海軍はこれら三万五千噸級主力の外に有史以來未だ曾て海上に出現した事のない巨艦を建造中で(中略)スターク軍令部總長は一昨年上院海軍委員會で日本海軍が「長崎、呉、神戸、横須賀の四ヶ所に於て四万噸以上の強大な主力艦を極秘裏に建造してゐる」と起工年月より竣工豫定まで説明してゐたがスターク總長の發表によると日本海軍の右四大戰艦は次々に竣工してもう大凡現役に編入されてゐる模様で 海軍記念日に發表された日本海軍現有勢力比中にこの「四万噸以上多分四万五千噸級と推察される」といふ偉大なる超々弩級四隻を勘定されたものと見られる。世界的權威あるゼーンの海軍年鑑には『三八年より三九年にかけ呉、横須賀兩海軍工廠と長崎三菱造船所神戸川崎造船所に於て四主力の建造に着手された噸數は四万噸以上、十六吋砲九門を備へ時速三十ノット以上と傅へらる』と書いてある。米國の三万五千噸級新鋭戰艦はこの日本の新鋭戰艦には到底太刀出來ないので『未曾有の巨艦を建造』しつゝあるわけだが此等米側の巨艦は四万五千噸級と五万噸級の二種らしく一方日本海軍としても常に先手々々と機先を制して來た手前これを黙つて看過する筈はないから四大戰艦を進水せしめた跡には必ずや豪壮な驚異的新鋭大艦の建造に着手してゐると想像される。(羅府新報評論)

出典

  1. ^ Battleships: United States Battleships, 1935-1992、p. 97-103
  2. ^ U.S. Battleships: An Illustrated Design History、p. 448
  3. ^ 三万五千噸級 米戰艦進水”. Hoji Shinbun Digital Collection. Shin Sekai Asahi Shinbun. pp. 03 (1941年9月22日). 2023年10月6日閲覧。
  4. ^ 米海軍最新鋭主力艦 三萬五千噸の南ダコタ號水 豫定より四ケ月早く竣工”. Hoji Shinbun Digital Collection. Singapōru Nippō. pp. 01 (1941年6月2日). 2023年10月6日閲覧。
  5. ^ 軍令部秘情報(S15.10米国) 1940, pp. 7–8○米國海軍建艦状況一覽表 其ノ1(軍艦、潜水艦、特務艦艇ノ部)1940-10-1調
  6. ^ a b 米國海軍通常豫算上院通過 總額九億六千四百万弗 日本、四万三千噸級戰艦八隻を建造 海軍作戰部長語る”. Hoji Shinbun Digital Collection. Shin Sekai Asahi Shinbun. pp. 02 (1940年4月20日). 2023年10月6日閲覧。
  7. ^ a b 日米主力艦の比較 米國海軍の兩洋課題 スターク總長の發表に依る 日本海軍四大戰艦の就役問題”. Hoji Shinbun Digital Collection. Jitsugyō no Hawai. pp. 01 (1941年11月14日). 2023年10月6日閲覧。
  8. ^ 責任轉嫁の筋書 デマ建艦案と我當局/大建艦の伏線 巡洋艦の制限も撤廢 三國會議注目さる”. Hoji Shinbun Digital Collection. Singapōru Nippō. pp. 02 (1938年4月18日). 2023年10月6日閲覧。
  9. ^ 彼等遂に制限一擲! 新主力艦~英、四万二千噸十六吋砲搭載 米、四万五千噸十八吋砲搭載/米政府英國にエスカレーター條項援用を通報”. Hoji Shinbun Digital Collection. Shin Sekai Asahi Shinbun. pp. 01 (1938年4月1日). 2023年10月6日閲覧。
  10. ^ 英米の建艦競爭とエスカレータ條項”. Hoji Shinbun Digital Collection. Kawai Shinpō. pp. 01 (1938年5月17日). 2023年10月6日閲覧。
  11. ^ 英米共四萬噸以上の主力艦を建造”. Hoji Shinbun Digital Collection. Nichibei Shinbun. pp. 02 (1938年4月1日). 2023年10月6日閲覧。
  12. ^ 英國の新主力艦は十六吋砲装備 防空設備をも加ふ 歐洲五ヶ國の建艦計畫”. Hoji Shinbun Digital Collection. Nippu Jiji. pp. 08 (1938年12月20日). 2023年10月6日閲覧。
  13. ^ a b c 英米佛新海軍協定調印 主力艦噸數最大限四萬五千噸とす 六月三十日新方式成立”. Hoji Shinbun Digital Collection. Nichibei Shinbun. pp. 03 (1938年7月2日). 2023年10月6日閲覧。
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  15. ^ 愈よ年内に着手 米海軍の主力艦四隻”. Hoji Shinbun Digital Collection. Singapōru Nippō. pp. 02 (1938年7月23日). 2023年10月6日閲覧。
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  22. ^ 日米兩國の建艦競爭 英海軍年鑑が表示 兩國とも航空母艦と戰艦に専念”. Hoji Shinbun Digital Collection. Yuta Nippō. pp. 03 (1942年5月15日). 2023年10月6日閲覧。
  23. ^ 米の超弩級艦進水”. Hoji Shinbun Digital Collection. Yuta Nippō. pp. 02 (1943年12月10日). 2023年10月6日閲覧。

参考文献

  • 大塚好古「アメリカ戦艦発達史 "1939年型戦艦"の「サウス・ダコタ」級」『歴史群像太平洋戦史シリーズ58 アメリカの戦艦』学習研究社、2007年、ISBN 978-4-05-604692-2
  • William H. Garzke、Robert O. Dulin「Battleships: United States Battleships, 1935-1992」、1995年、 ISBN 978-1557501745
  • Norman Friedman「U.S. Battleships: An Illustrated Design History」、1983年、 ISBN 0-87021-715-1

関連項目

外部リンク




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