ゲーム脳研究の始点
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/05 18:44 UTC 版)
森は当初、高齢者の脳波の測定を目的に「認知症のレベルを定量化できる」とする独自の簡易脳波計の開発を行っていた。2000年頃、この簡易脳波計の開発を委託していたソフトウェア開発会社のプログラマ8名を被験者として試作段階の簡易脳波計の動作検証を行ったところ、β波の出現割合が著しく低い、つまりこの簡易脳波計において「認知症」の状態とされる脳波であることが発見された。森は機械が壊れているのかと疑い、プログラマ以外の者で測定してみると、ここでは正常とされる結果が出た。そこで、最初の被験者となったプログラマ達と面談した結果、彼らが「認知症」とされる脳波を示した理由について ソフトウェア開発者の仕事は視覚情報が強く、前頭前野が働くのは勤務時間内でもほんの一瞬で、使い続けていない。 彼らの仕事は、設計図を描くわけではなく画面(主にソースコード)を見て作る。 朝9時に席に座り、夕方5時までずっと画面を見ている。 ひらめいたり、集中しているのはわずかな時間で、ただ画面をみている時間のほうが圧倒的に長い。 彼らは、ほとんど会話をせず一日を過ごすパターン。 コミュニケーションがほとんどなく、昼休みもひとりで弁当を食べているだけ。 家に帰ってもディスプレイに向かうことが多く、あまり口をきかない。 彼らのうちのひとりが「言われてみると、自分でも少しオタクっぽいかな、と思うこともある」と話していた。 以上のような点を挙げた。 この結果を受けて、森は、前頭前野の機能低下(森の簡易脳波計において、β波の割合が低いことを指す)は、画面に向かう時間が長いのが原因ではないかと仮定し、視覚が中心であるテレビゲームにおいての脳の状態について調査を行うことにした。森が所属している日本大学の学生のうち、まずテレビゲームを長く遊んでいるという学生10名を対象にこの簡易脳波計で計測を行ったところ、β波がほとんど出ていない、α波やβ波が重なっているなどの結果か出た。その後、無作為に選んだとする幼児から大学院生までの約300人(ただし、2002年7月8日の毎日新聞の報道では、6〜29歳の男女240人としている)を対象に脳波を調べ、各被験者のゲーム中のβ波の出力をもとに調査を行った。これらの調査においての簡易脳波計におけるβ波の有無を、「認知症」の問題とは別に、テレビゲームとの関連性と位置づけたものがゲーム脳だとしている。
※この「ゲーム脳研究の始点」の解説は、「ゲーム脳」の解説の一部です。
「ゲーム脳研究の始点」を含む「ゲーム脳」の記事については、「ゲーム脳」の概要を参照ください。
- ゲーム脳研究の始点のページへのリンク