グレズリー式弁装置
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/12 04:00 UTC 版)
「国鉄C53形蒸気機関車」の記事における「グレズリー式弁装置」の解説
本形式に採用されたグレズリー式連動弁装置は、ロンドン・アンド・ノース・イースタン鉄道 (LNER) の技師長 (Chief Mechanic Engineer:CME) であったナイジェル・グレズリー卿が考案した、単式3シリンダー機関車のための弁装置である。 これは通常のワルシャート式弁装置を基本として、その左右のピストン弁の尻棒の先端に連動大テコ(2 to 1 Lever:右側弁の尻棒と連動小テコの中央部に設けられた支点とを結び、中央部で台枠とピン結合される)・連動小テコ(Equal Lever:中央弁の尻棒と左側弁の尻棒を結ぶ)の2つのテコの働きにより、左右のシリンダーのバルブタイミングから差動合成で台枠中央部に設けられたシリンダーのバルブタイミングを生成する、簡潔かつ巧妙な機構である。 この方式を使えば、それぞれのシリンダーに独立した弁があるタイプの3シリンダー式に対し、中央シリンダーのロッド・クランク横のバルブギアを省略できるので整備の際に下にもぐる手間が省けるが、ベアリングの摩耗などでわずかでもレバーにガタが生じると中央シリンダーの動きがずれて主動軸クランクに損傷が起きるという問題があった。そのため、ウォーバッシュ鉄道クラスK5では納品直後に中央シリンダーのメインロッド関連で不具合を引き起こし、ニュージーランドのNZR 98もグレズリー式連動弁装置が問題を引き起こし配備から9年でCLASS G(4-6-2)へ部品提供のため解体されている。CLASS G(4-6-2)もグレズリー式連動弁装置を引き続き採用したこともあり欠点が多く2シリンダー化も提案されたが費用面の問題で車齢19年で廃車された。発祥の地のイギリスでも二次大戦中この問題が発生しており、、LMSの3シリンダー機関車の6倍に及ぶ故障が起きていた。グレズリー式連動弁装置はリンクやピンの数が多すぎて、摩耗やレバーのたわみの影響を受けやすかっただけでなく、「様々な機能的欠点」を抱えていると多くの人物が指摘しており設計自体に欠陥を抱えていた。 本機においては正式に特許実施権を獲得していたアメリカのアルコ社で設計・製造したC52や満鉄のミカニ(日本で製造したものもあるがアメリカ製造車と同設計)と違い、グレズリー弁関係のノウハウがない状態で設計を変えてあるので以下のような点で問題が生じている。 軽量化を優先して連動テコを細く、さらに上下方向に穴を8つ開けておいたため高速で動作する際の変形を招いた。 クランク軸にニッケル・クローム鋼を使用した所、発熱が大きくなった 給油機構がうまくいっておらず、上記の発熱もあって潤滑不足による中央クランクの焼きつきが問題になった。 リンクの動作中心をピストン弁中心に合わせるのではなく、リンクの回転円の外端をピストン弁中心に合わせて設計されている。 なお、国鉄側では中央シリンダーの不具合について台枠との取り付けが悪い(弱い)と認識していたらしく、国鉄によって編集された『鉄道辞典』では「C53形機関車」の項で「この部(注:主台枠の中央シリンダーの取り付け部分)に亀裂が発生して困った」と記述がある他、「3シリンダ機関車」や「C59形機関車」でも中央シリンダーと台枠の取り付けに関して記載がある。
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