キミ (カバネ)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/19 01:15 UTC 版)
キミ(君、公、岐彌、枳美)は、ヤマト政権のもとで行われた姓(かばね)の一つ。
概要
キミは元々首長の尊称で、「支弥」や「岐彌」の字が当てられていた[1]。しかし姓氏制度が整い、「君」姓と「公」姓に区別されるようになった。「君」の大部分は中小豪族で、330あまりの氏族が数え上げられ、「三輪君」・「犬上君」など畿内及びその周囲に多い。地方豪族にも授けられ、関東の「上毛野君」(かみつけぬのきみ)・「下毛野君」(しもつけぬのきみ)[2]、九州の「筑紫君」や「筑紫火君」[3]などがあげられる。8世紀以降になると、 蝦夷・ 隼人の首長にも与えられたという。
「公」は主として、「息長公」・「多治比公」・「当麻公」など、 応神天皇以後、あるいは 継体天皇以降の 皇族の後裔と称する皇親氏族に与えられた。大和政権の王が 大王(おおきみ)と称するようになると,君・公は「姓」として位置づけられるようになり、「大王」はその大なるものとして豪族を超越するものへと発展していった。
天武天皇13年10月(684年)に八色の姓が制定され、その日のうちに「公」氏族は、最高位の真人(まひと)を賜姓されている[4]。また11月には「君」氏族の一部が「臣」氏族とともに「朝臣」に改姓させられた[5]が、「君」のまま据え置かれたものも多かったという。天平宝字3年(759年)、「君」も「公」姓と表記するように定められた[6]。
起源
「キミ」の称号が見られる最も古いと思われる文書[7]は『日本書紀』継体天皇7年(513年?)の『百済本記』で、穂積臣押山が「委意斯移麻岐彌(わのおしやまきみ)」と表記されている。当時、百済ではキミの称号が流通しており、久羅麻致支彌、印支彌、鷹奇岐彌、爲哥岐彌などが知られている。554年に筑紫国造が戦功によって百済の威徳王に「鞍橋君」という称号を与えられた(『日本書紀』舒明天皇15年条)。李基文によれば「キミ」は新羅国主の称号「今(尼師今、尼叱今)」に起源する[8]。新羅第5代国主「婆娑尼師今」は『日本書紀』神功皇后摂政前紀にある新羅王「波沙寐錦(はさむきむ)」と考えらえており、国主号「尼師今(にしきん nisi-kin)」が古くは「寐錦(むきむ mu-kim)」と書かれている。広開土王碑に「新羅寐錦」、中原高句麗碑に「東夷之寐錦」、蔚珍鳳坪碑に「寐錦王」と書かれており、「寐錦」は新羅の固有の君主号と考えられている。「今 (kin)」や「錦 (kim)」は「キミ(kimi)」に対応する。
オオキミ
オオキミ(大君、大王)はキミの中の第一の者という意味で、天皇号が使われる以前の、ヤマト政権の支配者の称号として使われた。推古紀二十年条(612年)に「於朋耆彌」と書かれ、『隋書』開皇二十年条(600年)には「阿輩雞彌」と書かれている。天皇号が普及するにしたがい、オオキミの称号は天皇だけでなく、皇子や皇女に対しても用いられた。
マエツキミ
マエツキミは「前つ君」、すなわちオオキミ(天皇、大王)の前にいるキミ(臣)の意味で、朝廷の合議に参加する者の称号である。マエツキミの音仮名には「魔幣菟耆瀰」(景行紀)や麻卑兜吉寐(『翰苑』)が当てられている。『日本書紀』によれば推古天皇代に大伴咋連、蘇我豐浦蝦夷臣、坂本糠手臣、阿倍鳥子臣をマエツキミ(大夫)と呼んでいる。景行紀には武內宿禰を「棟梁之臣(むねとるまちきみ)」と呼び、「マチキミ(侍臣)」が「マエツキミ(前臣)」の古い呼び名の可能性がある。臣連制度が展開するに及んで「マエツキミ」は使われなくなった。
脚注
- ^ キミは原始的カバネである「キ」と「ミ」の合体した称号との説がある。「キ」は軍事的首長、「ミ」は呪術的首長の称号と考えられており、その両方を併せ持った首長が「キミ」と呼ばれるようになったとの考えである。
- ^ 『日本書紀』巻第五、崇神天皇48年4月19日条
- ^ 『日本書紀』巻第十九、欽明天皇17年1月条
- ^ 『日本書紀』巻第二十九、天武天皇13年10月1日条
- ^ 『日本書紀』巻第二十九、天武天皇13年11月1日条
- ^ 『続日本紀』巻第二十二、廃帝 淳仁天皇、天平宝字3年10月8日条「天下諸姓著君字者。換以公字。」
- ^ 『聖徳太子平氏伝雑勘文』に伊斯賣支彌、巷宜大野多利支弥が知られている。
- ^ Ki-Moon Lee, S. Robert Ramsey, A History of the Korean Language p49, 978-0521661898
参考文献
- 『角川第二版日本史辞典』p257、高柳光寿・竹内理三:編、角川書店、1966年
- 『岩波日本史辞典』p303、監修:永原慶二、岩波書店、1999年
- 『日本書紀』(五)、岩波文庫、1995年
- 『日本書紀』全現代語訳(下)、講談社学術文庫、宇治谷孟:訳、1988年
- 『続日本紀』全現代語訳(中)、講談社学術文庫、宇治谷孟:訳、1992年
関連項目
「キミ (カバネ)」の例文・使い方・用例・文例
- ケーキミックス
- スキミング・プライシングとは、メーカーが当初高い価格を設定した後、価格を引き下げる戦略である。
- 僕はキミをずっと愛してた。
- 時に蓮、キミがね。お姉さんが手を取ってあげようか?毎年真っ先にはぐれるのは蓮だもんな。
- 大丈夫、キミなら出来る!自分を信じて!キミはもう既に立派なスイマーなのよ!
- でも、そういうキミはそれを気に入っているのだろう。
- シキミ属の数種の常緑低木と小型高木の総称
- 主に、熱帯の低木または木の亜科で、シキミモドキ科で、プウェウドウィンテラ属に属す
- 仏前で用いる為のシキミの葉と皮を乾燥し,粉末にした香
- スキミング防止カードも近頃人気となっている。
- それらは無線ICタグカードが「スキミング」(不正なデータ読み取り)されるのを防ぐことができる。
- スキミング防止カードを無線ICタグカードの上に置くと,その無線ICタグカードは満員電車のような場所で見知らぬ人によって簡単にスキミングできなくなる。
- 長澤まさみと岡田将生はどちらも「世界の中心で,愛をさけぶ」や「僕の初恋をキミに捧(ささ)ぐ」などの悲劇的なラブストーリーで主役を演じている。
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