ガス胞
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/01/27 00:52 UTC 版)
ガス胞は、膜に結合した紡錘型の小胞でプランクトン性の細菌の一部や藍藻で見られ、全体の細胞密度を下げることで浮力を与える。正の浮力は、光合成を継続させるため、細胞を水の表面に位置させるのに必要である。これらは、内側の表面が疎水性のタンパク質の殻で作られ、水は透過できないが気体の多くは透過できる。ガス胞は中空の円筒であるため、周りの圧力が大きくなると崩壊する。ガス胞の直径とそれが崩壊する圧力の間には、単純な関係がある。ガス胞がより太くなると、より弱くなる。しかし、より太いガス胞はより効率的であり、タンパク質のユニット当たりの浮力がより大きくなる。異なる種類の細菌は、異なる大きさのガス胞を作り、水中の異なる深さにコロニーを作ることを可能にする(早く生育し競争の大きい種は太いガス胞を持ち、最上層に来る。一方、生育が遅く暗所に適応した種は細いガス胞を持ち、深い層に位置する)。 細胞はガス胞を合成することで水中の深度に到達する。細胞が浮上すると、光合成量の増加によって炭水化物の搭載量を増加させることができる。位置が高すぎると細胞は光退色作用を受け、死に至ることもあるが、光合成量の増加による炭水化物の増加で密度が増し、沈む方向に移動する。一日の間に、日中は光合成により炭水化物が増加し、夜間は炭水化物が異化されることで、水中で細胞が存在する高さは変化する。即ち、炭水化物濃度が低くなり光合成が必要になると水面に向かって浮上し、細胞中の炭水化物が十分補給されると沈んで、有害な紫外線から逃れる。炭水化物が極度に蓄積すると、細胞内部の圧力が大きく変化してガス胞は崩壊し、細胞は水中深く沈む。
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