エンフィールド銃の特色
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/04 07:04 UTC 版)
「エンフィールド銃」の記事における「エンフィールド銃の特色」の解説
エンフィールド銃は、椎の実型の弾丸を用いるライフルマスケットであることから、長い射程と高い精度を持つが、当時の他国のライフルやライフルマスケットの中で群を抜くと言うほどでもなく、肩を並べる程度のものであった。しかし、エンフィールド銃が他国のライフルマスケットで圧倒的に勝るものは二つあり、それは、共に使用されたエンフィールド弾薬包から成り立つ「装填のしやすさ」と「銃身内の清潔性の高さ」である。 エンフィールド弾薬包を用いたエンフィールド銃の装填はとても容易で、.568口径のプリチェット弾やエンフィールド弾を包んだ弾薬包は、銃身の口径と僅かな差しかないにも関わらず、抵抗なく装填することができた。.550口径のエンフィールド弾はより装填がしやすく、弾薬包に包まれた状態でも、弾丸の直径は銃身の口径との差が大きいことから、装填に対する抵抗は.568口径の弾丸のそれよりももっと少なく、ラムロッドの重量だけで弾丸は銃身の底まで滑り落ちていった。発砲を繰り返せば、弾薬包に付着している蜜蝋が溶け、弾丸は自身の重量のみで銃身の底まで滑り落ちていった。 この様に装填がしやすいエンフィールド銃の弾丸と弾薬包は、.568口径のプリチェット弾とエンフィールド弾ならば1分間に2~3発、.550口径のエンフィールド弾ならば1分間に3~4発ほど撃つ事ができ、他国のライフルマスケットの連射速度が、基本1分間に2〜3発である事から、エンフィールド銃の連射性が他のライフルマスケットと比較してかなり優っていることが理解できる。 もし、全員が1分間に3発発砲できる1連隊分(800人)の兵士が、エンフィールド銃と.550口径のエンフィールド弾を装備し、10分間の射撃を行えば、24000発の弾丸を射撃する事ができ、この発砲数は、現代の機関銃であるM249 MINIMIの30分間の射撃、M240機関銃の36分間から25分間までの発砲数と同等である。 この事から、もし何もない700ヤード四方の平地で滑腔銃兵を相手にした場合でも、滑腔銃が運用されていた当時の主力兵科である戦列歩兵の前進速度は60 m/分(イギリス式)であったため、エンフィールド銃と同等の精度となる100ヤードまでの600ヤードを進んで1回射撃するためには9分以上かかるが、エンフィールド銃はその9分の間に27回も射撃できる。 800人の兵士ならば21600発程の発砲数となるため、理論上では、エンフィールド銃と.550口径のエンフィールド弾を装備した一連隊ならば、相手の有効射程に入る前に滑腔銃兵20000人近くを全滅、あるいは士気低下による戦列崩壊に追い込む事ができた。 エンフィールド銃は装填の容易さだけでなく、銃身の清潔性もとても高い。銃身内に装填する際と、発射して弾丸が銃身を通過していく際に機能するエンフィールド弾薬包の潤滑機能は、装填と発砲を毎回行うたびに銃身内に起こるファウリングを防ぎ、銃身内を清潔に保った。そして、エンフィールド銃の3条ライフリングは、他国のライフルマスケットに比べてライフリング本数が少なく、ねじれ率が遅いために、大量の発砲によって酷く汚れにくかった。 銃身の清潔性を保つことによって、銃の装填のしやすさや、精度、初速などの低下を防ぐことができ、効果的な射撃を維持することが出来た。エンフィールド銃とエンフィールド弾薬包の場合、1000発程の発砲をクリーニングなしで連続して行っても、銃身の清潔性はかなり保たれるため、発砲した回数分だけ、エンフィールド銃はその高い精度、速い初速、装填のしやすさをかなり維持する事が出来た。それに対して他国のライフルマスケットは、弾丸に塗られた潤滑剤の不十分さなどから十数発の発砲によってファウリングを起こしたり、弾薬包の問題によって弾道性などに問題を起こしてしまったりするなどの欠点がある。この事からエンフィールド銃は、過酷な環境で頻繁に武器を酷使する軍事にとても向いている武器であると評価できる。
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