ウィキペディアへの影響
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/20 14:33 UTC 版)
「インターネット監視財団とウィキペディア」の記事における「ウィキペディアへの影響」の解説
「ヴァージン・キラー」の項目のブラックリスト化はイギリスのウィキペディア利用者にとって思いもよらぬ結果をもたらした。 ブラックリスト化の影響を受けたインターネットサービスプロバイダ(ISP)からウィキペディア英語版にアクセスするイギリスの読者は記事の内容が検閲されるという直接的な影響を受けたとはいえ、この検閲自体は回避可能だった。しかし、イギリス国内のISPを利用する全ての編集者が一時的にウィキペディアのすべての記事の編集ができなくなり、URLがブラックリストに載っている間はこれらのISPから匿名での編集も不可能になった。しかしIWFによればこれらは意図せぬ「巻き添え被害」だった。 ウィキペディアはその方針上「読者が不愉快であったり侮辱と感じたり、度を過ごしていると思える」ものであってもコンテンツを検閲しないことをうたっている。あくまでそういった画像は、関連性が薄かったり明らかに悪戯である場合や、サーバーが置かれているフロリダ州の法律に照らして違法であるときに、不適切な編集として除去される。 通常のインターネットユーザーは固有のIPアドレスを持っており、ウェブサイトはそれを把握している。しかし、ISP各社がCleanfeedの仕組みを通じてIWFのブラックリストを使用していたため、その影響を受けたISPを介したウィキペディアへのトラフィックはプロキシサーバーを経由するようになった。 ウィキペディアは利用者が匿名状態でも記事を編集する事ができるようにしている。荒らしを行った利用者や何らかのルールを違反した利用者を選択的にブロックするのにもそのIPアドレスが使われる。しかしフィルタリングのためのプロキシによりユーザーを個別に把握することが不可能になったウィキペディアは、悪戯を防ぐため「イギリスに居住しているインターネット利用者の95%を占める大手ISP6社からの匿名での編集を全面的に禁止」せざるを得なかった。その影響はすぐに現れ、イギリスの登録利用者ほぼ全員が編集活動を再開する前にアカウントにかけられたIPの自動ブロックの解除を申請しなくてはならなくなった。そしてウィキペディアにアカウントを作成しない人間、つまりIPアドレスによる編集が不可能となった。 ウィキペディアを動かしているソフトウェアであるメディアウィキはX-Forwarded-For(XFF)のヘッダを読み取ることができ、ウィキペディアが利用者のプロキシではないメインのIPアドレスを識別することができるようにするとともに、プロキシサーバーではなくクライアントのIPによって個別にプロキシユーザーのブロックを可能にしている(個々の利用者の行為でプロキシ全体をブロックする必要がない)。しかしこの仕組みを導入してX-Forwarded-Forの情報をウィキペディアに渡しているISPは存在せず、ウィキペディアで通常行われている利用者の識別とブロック機能が使えなくなった。個々の人や団体に割り当てられるものとされていたIPアドレスは、実際には何百万という人間と何千というアカウント作成済みの編集者に割り当てられていた。ウィキペディアのサーバーはその全てを自分のコンピュータのIPではなくプロキシのIPであるとみなした。 フィルタリングするプロキシに接続をリダイレクトするボーダ・ゲートウェイ・プロトコルやその他のルーティング技術の誤使用により、一部のネットワークの利用者は一時的にウィキペディアのコンテンツを編集することもアクセスすることも一切できなくなった。こうして事態は自国民だけのはずがほぼ全世界に影響を及ぼしたパキスタンの事件を彷彿とさせるものとなった。
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