インドの歴史の史料
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/25 14:51 UTC 版)
インド人は、歴史意識を持たなかったと、批判的に語られることがあるが、これは近代的な歴史の叙述、あるいは古代ギリシアや古代中国に発する歴史記述の伝統とは異なった形で、インド人が歴史を語ってきたという事実を述べるに過ぎない。 その最も顕著な例として、プラーナ文献における歴史の語りがある。プラーナ文献は、神話を語る宗教文献として扱われることが最も多いが、宗教的な内容にとどまらず、人々の暮らしの規範や医学、音楽などに加え、歴史も重要な要素となっている。中でも、プラーナ文献の一種であるスタラ・プラーナは、特定の都市や寺院の起源を遡る、歴史意識によって編まれた文献群である。その叙述は、暦年によって系統立てられたものではなく、神々の事蹟や過去の偉人の生涯に関わらせる形で、その文献の主題となる都市や寺院の由緒を正統的に述べることに主眼がある。そのため、インド独特の歴史叙述とも言えるような特徴が見られるのである。 反対に、近代的な歴史学に直接に史料となりうるものに、碑文がある。最も古いものではアショーカ王碑文が有名であるが、王の即位後の年数や暦年が記されていることが多く、この点でもインド人に歴史意識が欠けていたとは言えないと考えられる。 インドの歴史において最も重要な史料である碑文のほかに、貨幣やその鋳型、印章・石柱・岩石・銅板・寺院の壁や床・煉瓦・彫刻などに刻まれた刻文、7世紀にバーナが著した『ハルシャ・チャリタ』に始まる伝記文学や12世紀にカルハナが著した『ラージャタランギニー』などの歴史書、その他の文献、さらにはメガステネース、プトレマイオス、法顕、玄奘などの外国人による記録も、インドの歴史の重要な史料となっている。
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