インタラクションの活用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/01 15:28 UTC 版)
「神経言語学的アプローチ」の記事における「インタラクションの活用」の解説
生徒同士で外国語で質問したり答えたりすること(インタラクション)は、内文法を発達させて自然にコミュニケーションが取れるようにするためには不可欠である。ANLでは、生徒同士のインタラクションをできるだけしやすくするために、5段階に分けて話す訓練をさせると同時に、学習ユニット全体を通して、二人組や少人数のグループでの活動を積極的に行わせるようにしている。確かに生徒たちは、求められたタスクを行うために必要な言語パターンをあらかじめ習って使えるようになってはいるのだが、彼ら自身の考えを表現しているという意味において、そのやり取りはやはり本物である。その他にもANLに特有の教え方がいくつかある。たとえば生徒は新しい言語パターンを習得する際、文の一部ではなく完全な文章の形で答えなければならない。そうすることによって、内文法がより構築されやすくなり、外国語が自然に話せるようになるからだ。またANLでは、生徒が話す外国語の中に間違いがあればその場で訂正し、もう一度正しい表現を使って文章全体を言い直させることにしている。それによって内文法の正確さを確保するためである(Lyster, 1998)。口頭で間違いをその都度訂正することが、内文法の育成にとって、言わば文法規則を教えることの代わりになっているのだ。ANLでは読み書きを教えるために8つのストラテジーを用いている。 現時点(2014年)では、ANLを適用した教育プログラムは二つある。それはカナダの「インテンシブ・フランス語」と、中国の大学でのフランス語学習プログラムである。「インテンシブ・フランス語」は5年生と6年生(11歳から12歳)の生徒を対象として始められ、高校卒業時まで続けられる。このプログラムは1998年にニューファンドランド・ラブラドール州で初めて導入されて以来、カナダのほとんどすべての州および準州に広まっている(フランス語話者が多数派を占めるケベック州には「インテンシブ英語」がある。これは「インテンシブ・フランス語」と似てはいるが、ANLの五原則に基づいている訳ではないため、全く同じものではない)。これまでに「インテンシブ・フランス語」に参加した生徒の数は6万2千人を超えている。また中国では2010年以降、19歳前後の若者を対象として、広東省の華南師範大学でANLに基づいたフランス語教育が行われている。この教育プログラムは、中国の他の教育機関だけでなく日本でも高い関心を集めている(Gal Bailly, 2011 ; Ricordel, 2012)。 以上の二つのプログラムは、ANLの共同考案者ジェルマンとネッテンの指導の下に開発されたものである。その他にも現在カナダでは、ANLを適用した教育プログラムの開発が他の専門家たちによって進められている。具体的には、ユーコン準州やノース・ウエスト準州、またサスカチュワン州やプリンス・エドワード・アイランド州で、ファースト・ネーションズ(先住民族)の言語を教えることを目的としたプログラムがあり、またケベック州のジェームズ湾地域では、英語やフランス語、クリー語を教えるためのプログラムがある。ケベック大学モントリオール校で最近行われたフランス語話者に対するスペイン語教育の試みが示唆しているように、ANLの五原則に適合するカリキュラム・リソースなら、何語であろうと自然にコミュニケーションが取れる能力を養うことができるのである。
※この「インタラクションの活用」の解説は、「神経言語学的アプローチ」の解説の一部です。
「インタラクションの活用」を含む「神経言語学的アプローチ」の記事については、「神経言語学的アプローチ」の概要を参照ください。
- インタラクションの活用のページへのリンク