イェンセンの事例(退行催眠時の真性異言)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/07 20:33 UTC 版)
「真性異言」の記事における「イェンセンの事例(退行催眠時の真性異言)」の解説
1955年から1956年にかけて、英語を母語とするアメリカ人の匿名女性に、夫の導入による催眠状態の中で、イェンセン(Jensen 。ただし姓であり、名ではない)という過去世の男性人格が登場した(ただし、慎重なスティーヴンソンは、可能性が高いとしながらも真偽の判断は保留している)事例。女性はユダヤ系の両親の元で育ちフィラデルフィアで育っている。父親も母親もロシアのオデッサ生まれの移民。両親をはじめこの女性の生育歴を見る限りスウェーデン語を学んだ形跡はないにも関わらず、退行催眠中に登場するイェンセンはスウェーデン語の母語話者と会話をすることができた(8回行われた退行催眠セッションの間に、6〜8回ほど母語話者と直接話をした)。イェンセンの話すスウェーデン語にはノルウェーなまりがあり、また自分の住んでいる場所をはじめいくつかの地名を明らかにしたが、現在の地図でどこに相当するのかは特定できなかった。 アメリカの言語学者セアラ・トマソン(Sarah Grey Thomason)による再調査では、イェンセンがスウェーデン語話者であることを、納得を以て断言することができなかった。対話の中で勉学に励んだと語っていたイェンセンの語彙は100語程度しか無く、しかもその内60語ほどは対話相手が先に用いた語であり、更にスティーヴンソンのコンサルタントの一人が指摘したように、英語との同族語を除いてしまえばイェンセンの純粋なスウェーデン語の語彙は31語程度に収まってしまう。また、イェンセンが複雑な文章を組み立てる事は無く、返答は一二語ほどで簡単に済ませてしまう。スティーヴンソンも認めるように、イェンセンのお粗末な発音は、筆記転写による正確な綴りで補われていた。しかしながらスティーヴンソンのコンサルタントのうち2人は彼のスウェーデン語のアクセントを賞讃し、またある1人は「7」の発音が母語話者のそれと比べて正確であると断じた。トマソンは、欺瞞を取り除こうとする先のスティーヴンソンの努力を認めている。しかしイェンセンのスウェーデン語能力は「店で何かを買うのに、代わりに支払うものは?」という質問に対して「私の妻」と答える程度のものであった。後に言語学者ウィリアム・サマリン(Willam John Samarin)もトマソンの調査結果を追認している。
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