アメリカにおける政治科学の成立と発展
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/12/02 06:31 UTC 版)
「政治学方法論」の記事における「アメリカにおける政治科学の成立と発展」の解説
前述のように、(特に20世紀の)アメリカ合衆国においては、それまでの規範的・制度論的な政治学とは異なる、実証的な方法論に基づく政治学研究が発展した。そのような研究の先駆者と目されるのが、『統治過程論』などを執筆したアーサー・ベントリー(1870年 - 1957年)や、『政治における人間性』を執筆したグラハム・ウォーラス(1858年 - 1932年)である。 このような先駆的な研究に続いて、本格的に実証的な研究の方法論を政治学の領域に導入した領域のひとつが、投票行動論の分野である。コロンビア大学の研究者によって示された、投票行動における社会学的モデルは、投票行動における政党の選択が、有権者の社会的な諸属性によって決まることを主張した。また、その後、ミシガン大学の研究グループは、コロンビア学派の示した社会学的な要素の投票行動に対する影響に加え、社会心理学的な要素も投票行動に影響を与えることを指摘している。これらの諸知見は、社会調査に基づいて行われており、特にミシガン大学による調査では、当時発展しつつあったコンピュータを用いた分析などが行われたことが特筆される。 その後、このような実証的な方法論に基づく政治学研究は、心理学、社会学など広く他の人文社会学系学問と歩調を合わせるように、行動主義に基づく行動論政治学として展開される。この立場を代表するのが、システム理論を政治学の領域に適用し、政治システム論を展開したデヴィッド・イーストンである。彼は、サイバネティクスなどの影響も受けながら、政治システムの構造を図式化し、そのメカニズムを相対的に捉える枠組みを示そうとした。 これに加えて、第二次世界大戦後のアメリカで発展し、1980年代以降に大きな影響力を持っているのが合理的選択理論である。これは、ミクロ経済学の方法論的個人主義に基づいた分析を政治の領域においても適用しようと試みるものであり、効用の最大化を目指す合理的な有権者を想定したモデルを用いたアンソニー・ダウンズによる投票行動研究などがその先駆的なものと言え、その後広く研究されるようになった。
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