アメリカにおける格差の研究
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/01 07:03 UTC 版)
「ガブリエル・ズックマン」の記事における「アメリカにおける格差の研究」の解説
『失われた国家の富』でフランスの事例を中心に取り上げたズックマンは、その後アメリカにおける格差へと研究領域を拡げた。エマニュエル・サエズと共著論文「Wealth Inequality in the United States since 1913」(2014年)を発表し、アメリカの格差問題について研究している。ピケティやサエズとは精力的に共同研究を続け、「Distributional National Accounts: Methods and Estimates for the United States」(2016年)にも引き継がれている。サエズとの研究の成果は共著『つくられた格差』に結実した。 『つくられた格差』において、ズックマンとサエズはアメリカの問題を以下のように論じている。 アメリカの格差拡大 法人税と富裕層の減税:1980年以降、法人税減税と富裕層への減税を繰り返してきた。ロナルド・レーガン政権は、超高額所得層への減税として90%から28%へ下げた(1986年)、ドナルド・トランプ政権は法人税率を35%から25%へ減税した(2017年)。累進課税の廃止と減税が格差拡大の一因だった。 労働税と資本税の区別:資本所得には減税したが、労働所得には減税がされなかった。このため資本所有者が労働者よりも優遇された。 租税回避産業:レーガン政権以降に租税回避が奨励され、租税回避業務が拡大した。コンサルタント、財務関連の請負業者などが増加し、特に4大会計事務所は顧客にノウハウを提供した。租税回避産業は当初とは異なり、高額所得者層向けになった。タックスシェルター(英語版)の方法が増加したのもレーガン政権時代である。 格差拡大への対策 矯正税:各国で自国の多国籍企業を取り締まる。経済協力開発機構(OECD)の「税源浸食と利益移転に関する包括的枠組み」をもとにさらに強化し、節税分を本国での課税で相殺する(矯正税)。 共通税率:各国で共通の最低税率を決める。G20を中心とした国家の協調が必要である。 防御措置:国際協調をしない国に本社を置く企業に対して防御措置をとる。タックス・ヘイヴンに本社を置く多国籍企業に対しては、商品やサービスを提供している国の政府が矯正税を徴収する。 富裕層への累進課税:累進的な富裕税を課す。これによって、富の固定化によるレントシーキングを抑制する。 同額所得には同額税率:同額の所得には同額の税率を課す。これにより資本への課税と労働への課税の格差をなくす。 国民所得税:すべての所得に課税し、単一税率で控除をなくす。国民所得税と富裕層への累進課税によって、上位5%をのぞく所得者層で現在よりも税負担が減り、国民皆保険が可能になる。
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