脂肪細胞を顕微鏡で見ると、中性脂肪をたくわえ、核やミトコンドリアなど細胞の働きに重要な小器官が隅に押しやられています。このため、脂肪細胞は脂肪をためこんでは必要に応じて分解産物であるFFA(遊離脂肪酸)やグリセロールを放出している単なるエネルギー貯蔵庫とみなされてきましたが、これはまったくの誤解で、体の機能調節に重要な生理活性物質を活発に産生・分泌している人体最大の内分泌臓器であることが明らかにされています。
「アディポ」は脂肪、「サイトカイン」は生理活性物質を意味し、アディポサイトカインは脂肪細胞から分泌されるその多彩な生理活性物質の総称です。
アディポサイトカインには悪玉物質と善玉物質があり、悪玉には血栓をつくりやすくするPAI-1、インスリン抵抗性を起こすTNF-α、レジスチン、血圧を上げるアンジオテンシノーゲン、レプチンなどが、また善玉にはインスリン抵抗性を改善し、動脈硬化を防ぐアディポネクチンがあります。
内臓脂肪の蓄積は、これらのアディポサイトカインの産生・分泌に異常をきたし、血液中の悪玉物質が増加する一方、善玉物質の血中濃度を低下させることで、動脈硬化を直接的に促進し、また糖尿病をはじめとする生活習慣病のリスクを高めるのです。
アディポサイトカイン【adipocytokine】
アディポサイトカイン
別名:脂肪組織由来生理活性物質
アディポサイトカイン【あでぃぽさいとかいん】
アディポサイトカイン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/07 02:43 UTC 版)
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アディポサイトカイン(Adipo-cytokine)とは脂肪細胞から分泌される生理活性物質の総称であり[1]、アディポネクチンやレプチン、TNF-αなどが含まれる。アディポサイトカインはその生理活性から善玉と悪玉に大きく分けられる。近年、生活習慣の変化によりメタボリックシンドロームの患者数が増加の一途をたどっているが、これらの物質はメタボリックシンドロームの発症において中心的な役割を果たしていると考えられており、注目を集めている。
善玉アディポサイトカイン
悪玉アディポサイトカイン
- TNF-α
- 遊離脂肪酸
- インターロイキン-6
- MCP-1
- アンジオポエチン様タンパク質-2(Angiopoietin-like protein 2、Angptl2)
- プラスミノゲンアクチベーターインヒビター-1(PAI-1)
メタボリックシンドロームとの関連
メタボリックシンドロームに関する研究が進み、脂肪組織は様々な生理活性物質を分泌する内分泌組織であるとの考えが根づいてきた。健常人の脂肪細胞からは善玉アディポサイトカインが放出されているが、脂肪の蓄積により脂肪細胞の肥大化が生じると機能異常を引き起こし、悪玉アディポサイトカインを放出するようになる。
アディポサイトカインの中でも血中に最も多く存在するのが善玉アディポサイトカインのアディポネクチンであり、抗動脈硬化作用などを示すが、内臓脂肪が蓄積した患者ではその分泌量が低下している。
脚注
- ^ 伊藤豊『医者が教える最強の栄養学』KKロングセラーズ、2017年、69ページ、ISBN 978-4-8454-5042-8
参考文献
アディポサイトカインと同じ種類の言葉
サイトカインに関連する言葉 | アディポサイトカイン(あでぃぽさいとかいん) サイトカイン(さいとかいん) 抗炎症性サイトカイン 炎症性サイトカイン |
カインに関連する言葉 | 塩酸ロピバカイン(えんさんろぴばかいん) ロピバカイン(ろぴばかいん) アディポサイトカイン(あでぃぽさいとかいん) ブレカイン 塩酸プロカイン |
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