アスベスト健康被害
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/03 07:38 UTC 版)
詳細は「アスベスト問題」を参照 近年になって、石綿繊維を大量に吸った場合に人体に悪影響を与えることが判明した。初めて石綿症の論文が発表されたのは1900年代の石綿鉱山町における短命や肺病との関連についてのものだった。 イギリスでは1924年には石綿症の診断基準が定められ、1930年代には換気についての労働基準が定められた。1970年代に入りアメリカの裁判所は、アスベスト産業界が1930年代からアスベストの危険性を認識しつつ隠蔽を行っていたものと認定した。 アスベストは世界保健機関 (WHO) の付属機関国際がん研究機関 (IARC) により発癌性がある(グループ1)と勧告されている。アスベストは肺線維症、肺癌の他、まれな腫瘍である悪性中皮腫の原因になるとされている。したがって、世界的にアスベストの使用が削減・禁止される方向にある。 日本では、2005年(平成17年)にアスベスト原料やアスベストを使用した資材を製造していたニチアス、クボタで製造に携わっていた従業員やその家族など多くの人間が死亡していたことが報道された。クボタについては工場周辺の住民も被害を受けている。その後も、造船や建設、運輸業(船会社、鉄道会社)などにおける被害が報じられ、2005年7月29日付けで厚生労働省から1999年度(平成11年度)から2004年度(平成16年度)までの間に、日本全国の労働基準監督署において石綿による肺癌又は中皮腫の労災認定を受けた労働者が所属していた事業場に関する一覧表が公表された(後述外部リンク参照)。2012年(平成24年)には、日本で1400名の中皮腫による死亡者が発生しており、過去の石綿汚染の健康被害が本格的に顕在化し始めているとみられている。 また、京王8000系電車の運転台撤去工事において、同車の断熱塗料に本来含まれていないはずのアスベストが検出された。これにより改造工事を行った作業員12人は無防護の状態で改造工事を行っていることとなり、健康被害が疑われる事態となった。 なお、環境省では、建築物の解体によるアスベストの排出量が、2020年(令和2年)から2040年(令和22年)頃にピークを迎えると予測している。年間10万トン前後のアスベストが排出されると見込まれ、今後の解体にあたって建築物周辺の住民の健康への影響が懸念されている。 日本よりも先にアスベスト健康被害が問題化したアメリカ合衆国では、当時世界最大のアスベストメーカーであったジョンズ・マンビル社に対し訴訟が相次ぎ、マンビル社が事実上の倒産に追い込まれた。国内においてマンビル社の日本総代理店として大量のアスベストを輸入していたのは、東京興業貿易商会である。
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