有機溶剤抽出法
【英】: vapor extraction process
略語: VAPEX
有機溶媒によるビチューメン回収法。 この方法は井戸の配置や回収システムは SAGD 法と同じだが、唯一違うのは、水蒸気の代わりに、揮発性がありビチューメンが溶解する有機溶媒(例.プロパン)を圧入する点にある。つまり、ビチューメンを、水蒸気の熱により粘性を下げて回収する代わりに、有機溶媒に溶かして流動性を持たせ回収するという手法である。 カナダでのオイルサンド開発手法であるin-situ 法のうち、現在適用されている CSS 法と SAGD 法は、ともにビチューメンの粘性を下げ流動化させ回収するために水蒸気を圧入する方法である。一般に、水蒸気を生成する燃料としてガスが使用されているが、例えば SAGD 法では 1 バレルのビチューメン回収に必要な水蒸気を生成するには 2.5 バレルの水と 1,000 立方フィートのガスが必要とされており、大量の燃料ガスおよび水が必要となる。ところが昨今の北米でのガス価の高騰によりガス購入価格が激増し、結果として操業費の高騰につながっており、これがオイルサンド生産事業の最大の問題の一つとなっている。さらに、環境面を考えると河川や湖、表層地下水の取水についても将来制限される可能性がある。このような問題を考慮し、オイルサンド事業者や政府は水やガスを使用しない in-situ 法の研究実験を実施しており、そのひとつが VAPEX(Vapour Extraction Process)法である。 SAGD 法と比較した場合の本手法のメリットとして、(1) 使用水の貯蔵施設や水処理プラントが不要なため 25 %の開発費が削減できる、(2) 燃料ガスや水の確保が不要なため 50 %の操業費を削減できる、(3) 地層中を拡散する際、冷えていく水蒸気の熱に比べ有機溶媒の効果は比較的一様である、といった点が挙げられる。一方、デメリットは、井戸1坑当りの回収率が劣るため、同量の生産量を得るには井戸数を増やさねばならない点にある。本手法はいまだ実験段階だが、米国デボン社やカナダのエンカナ社が、カナダ連邦およびアルバータ州両政府とともに、積極的に実証実験を行っている。 (磯江 芳朗、2006 年 3 月) |

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