やがて明ける夜 The Dying Night
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「アシモフのミステリ世界」の記事における「やがて明ける夜 The Dying Night」の解説
※初出『F&SF』1956年7月号。ウェンデル・アース博士もの。短編集『停滞空間』にも収録されている。 地球で開催された学会に、四人の同級生が集まった。彼らは同じ大学院で学んだ仲間だったが、そのうちのひとりヴァリアーズはリューマチ熱に罹り、心臓に障害を持っていた。彼は四人の中で最も優れ将来を嘱望されていたのだが、病気のためにロケットの加速に耐えられず、地球を離れることはできなかった。ほかの三人はそれぞれ月面、小惑星セレス、そして水星に赴任した。地球に残された男は、三人に対して憎悪に近い感情を抱いていた。いま四人は同じホテルに宿泊している。ヴァリアーズが三人が集まっている部屋を訪ねてきた。彼は質量移転法について明後日の会議で発表すると話した。それは事前通告もせず、配布資料も準備せずに衝撃的に発表するらしい。会議の議長であるマンデル博士の目の前で実演してみせたら、発表する許可を得られたともいう。ヴァリアーズは自分の部屋に戻り、夜の11時ころに、今度は三人組のほうから彼の部屋を訪ねた。ヴァリアーズは自分用の資料を隠すような仕草をして三人を追い払った。 翌日の未明に、三人組はマンデル博士によって起こされ、彼の部屋に集められた。ヴァリアーズが死亡し、彼の発明の資料が燃やされていた。そしてヴァリアーズは、死に際にマンデルに電話して「同級生が…」と言ったらしい。三人をマンデルは問い詰めたが、誰も身に覚えがないという。すでに死体が運び出されたヴァリアーズの部屋に行ったのは、ちょうど夜明けのころで、窓の外にある窪みに記録用フィルムが隠されているのを見つけた。日光によってフィルムはほとんど感光していた。事件の解決を図るべく、ウェンデル・アース博士のところに一行は向かった。 アース博士が注目したのは、光に弱い記録用フィルムをわざわざ外に隠したことだ。地球以外の天体では、空気のない屋外に出る人間はほとんどなく、フィルムが発見されないことは簡単に予想できる。ほとぼりが冷めてから回収すればいいのだ。だが自転している天体では、ほとぼりが冷めるまでには何回も朝を迎えてしまう。そしてフィルムは感光するのだ。ひとつだけ永遠の昼と永遠の夜だけの天体がある。犯人は水星の研究所にいる男だった。永遠の夜の中で生活していた男は、朝が来るということを忘れていたのだ。 犯人は深層心理検査にかけられ、ヴァリアーズの資料をフィルムに写したとき、あるいは燃やしたときの記憶を引き出されるだろう。そうすれば質量移転装置を作ることができる。事件を解決したことへのアース博士の要求は、装置が完成したらそれを使ってある場所に行かせてほしいだった。乗り物嫌いの博士でも、質量移転は乗り物とは思わず、むかし知り合った女性に会いに行きたいそうだ。(※この作品が書かれたときは、水星は自転と公転が同期していて、昼と夜がそれぞれ永遠だと考えられていた。)
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